平成24年度は、リポペプチド抗原提示を担う分子機構の解明に向けて、以下の研究を展開した。 1.特異的T細胞株の解析より、リポペプチド抗原提示分子は少なくともサル単球上に発現していることが分かっている。そこで、サル単球を免疫原として、マウスあるいはラットへの免疫を行った。脾臓細胞あるいはリンパ節細胞を回収し、ミエローマ細胞と細胞融合することにより、多数のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマクローンを作製した。そして、この中から特異的T細胞株の応答を阻害する抗体のスクリーニングを行った。その結果、得られた阻害活性を持つ抗体群は、抗インテグリン抗体および抗MHCクラス1抗体に大別されたことから、リポペプチド抗原提示を担う接着分子および抗原提示分子について重要な知見が得られた。 2.リポペプチド抗原(Cl4nef5-mer抗原)のペプチド配列あるいはアシル鎖長に様・々な変異を入れたアナログを合成し、その抗原活性を評価した。次に、抗原活性が見られなかったアナログについて、Cl4nef5-mer抗原との競合実験を行った。その結果、リポペプチド抗原提示には少なくとも以下の2タイプの様式があると考えられた(Morita et al. J.Virol. 2013)。a)ペプチド長は5残基を必要とし、リポペプチドのアシル鎖とN末端から5残基目(C末端)のアミノ酸残基が抗原提示分子へのアンカーとして機能する。そして、N末端から2残基目と4残基目のアミノ酸側鎖はT細胞による認識に重要な役割を果たしている。b)ペプチド長は4残基を必要とし、リポペプチドのアシル鎖が抗原提示分子へのアンカーとして機能する一方、N末端より5残基目のアミノ酸残基は不要である。N末端より4残基目のアミノ酸が、抗原提示分子への結合あるいはT細胞による認識のどちらか、あるいは両方に必須の役割を果たしている。
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