研究課題/領域番号 |
12J05255
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
高柳 真司 同志社大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ZnO(酸化亜鉛) / 六方晶系圧電体 / 結晶配向制御 / イオン照射 / スパッタ成膜 / RFバイアス / c軸平行膜 / 横波モード薄膜共振子 |
研究概要 |
本研究は圧電軸(以下、c軸)が基板面に対して平行かつ一方向に揃った六方晶系圧電薄膜(以下、c軸平行膜)を形成し、横波モード薄膜共振子を開発することを目的としている。当該年度では、スパッタ成膜中に基板へRFバイアスを印加する方法(以下、RFバイアススパッタ法)を用いて、c軸平行膜形成メカニズムの検討を行った。 ZnOやAIN等の六方晶系圧電体では、c軸が基板面に対して垂直に結晶配向した膜(以下、c軸垂直膜)が熱力学的に安定で形成しやすく、c軸平行膜の任意基板上への形成は困難であった。一方で、c軸垂直膜は最密面である(0001)面配向の膜であり、成膜中にイオンビームを照射することで結晶粒が損傷を受けて成長が抑制される。これにより、原子が疎な(11-20)面や(10-10)面に優先配向を持つc軸平行膜が形成されることが判っている。そこで、エネルギーアナライザを用いて、RFバイアススパッタ法において基板に照射されるイオンの量・エネルギーを測定した。その結果、基板へ印加するRFバイアス電力を増加することで、O_2^+やAr^+等の正イオンの照射量・エネルギーが増加することが確認された。また、RFバイアス電力を変化させてガラス基板上にZnO薄膜を成膜したところ、RFバイアス無しの試料では(0001)面に優先配向を持っていたが、RFバイアス電力を増加させることで試料の優先配向が(11-20)面、(10-10)面の順に変化した。この優先配向の変化の順番は、表面エネルギー密度の低い順番、すなわち原子が密に詰まった面の順番と一致している。以上より、RFバイアス電力印加によって基板への正イオンの照射量・エネルギーが増加し、(0001)面が損傷を受けc軸平行膜が形成されることが判った。これらの成果は、横波モード薄膜共振子に適した薄膜作製だけでなく、他材料の薄膜の結晶配向制御への展開も期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の「研究の目的」に記載した基板へのイオン照射を用いたc軸平行膜の形成メカニズム解明について、「研究実施計画」に示したイオン照射測定や薄膜作製などの検討内容がおおむね達成できた。これらの研究成果は、国内、国際学会および論文誌にて発表されている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、より高配向なc軸平行膜を形成するために、雰囲気ガス圧等の成膜条件についても検討を行っている。次年度では、これらの結果を基に簡便かつより高配向なc軸平行膜の形成法について検討し、横波モード薄膜共振子としての特性を評価する。さらに、ZnOと同じ六方晶系圧電体であるAlNについても結晶配向制御の検討をしており、他の薄膜材料についてもRFバイアススパッタ法を用いて結晶配向制御が可能か検討する予定である。
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