研究課題/領域番号 |
12J05280
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中川 裕文 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | tRNA / X線結晶構造解析 |
研究概要 |
tRNAはDNA上の遺伝暗号とアミノ酸を対応させるアダプター因子として働き、転写された後様々な修飾を経て成熟化し機能する。様々な修飾の中でウリジン2位の硫黄修飾(s^2U修飾)はコドン・アンチコドン塩基対やL字型の3次元構造を安定化し、正確な翻訳を行うために必要である。真核生物の細胞質ではNcs6・Ncs2複合体がアンチコドン34位のs^2U修飾を担う。Ncs6・Ncs2複合体はアンチコドンがUUX配列をもったtRNAおよび34位ウリジンを選別し修飾を行っている。その反応メカニズムや特異性を構造に基づいて明らかにするため、構造解析に取り組んだ。真核生物のNcs6・Ncs2複合体について組換えタンパク質を様々なコンストラクトで精製、結晶化を行ったが結晶を得ることができなかった。そこで古細菌において真核生物細胞質Ncs6・Ncs2複合体と同様にs2U修飾を行うと推測されるNcs6ホモログについて、組換えタンパク質の発現および精製条件を検討し、結晶化可能な純度と収量を得ることができた。得られたタンパク質について結晶化スクリーニングを行い、結晶が得られる条件を見つけた。結晶化条件の最適化を行い、放射光施設にて4オングストロームを超える分解能でX線回折データを収集することができた。得られた回折データから分子置換法を用いてNcs6ホモログの電子密度をえた。 また、真核生物細胞質においてs^2U修飾と同じ部位に起こるメチルカルボキシメチル修飾について、その修飾を行う酵素群であるElp複合体についての発現条件を検討し、いくつかのサブユニットついては組換えタンパク質として可溶化する条件を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度が最終年度であったが、当初の目的である真核生物の硫黄修飾酵素複合体についてX線結晶構造解析を進めることができなかった。一方で相同性の高い古細菌のアンチコドン34位硫黄修飾酵素Ncs6ホモログについては安定な複合体を調製し、結晶を得られる条件を見つけ、X線回折データを収集することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
本年度が最終年度であった。今後は既に回折データが得られているNcs6ホモログについてより高分解能の回折データが得られるような結晶化条件およびX線回折像の測定条件をさらに検討する。またNcs6ホモログとtRNAの複合体の結晶化についてもさらに取り組んでいく。
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