研究課題/領域番号 |
12J05310
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
美辺 詩織 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 特別研究員-DC1
|
キーワード | 遺伝改変動物 / Cre-loxpシステム / 上衣細胞 / 生殖機能制御 / エネルギーセンシング / フローサイトメトリー / 細胞内カルシウム測定 |
研究概要 |
本研究の目的は、生殖機能を制御する新規エネルギーセンサー細胞を同定することである。酪農の現場では、高泌乳牛の受胎率低下が問題となっている。解決方策としてエネルギーバランスと生殖機能の関係について詳細なメカニズム解明が求められているが、完全な解決には至っていない。そこで、低栄養による摂食量の増加と生殖機能の抑制に関与するメカニズム解明のため、エネルギーレベルを感知するシステムに着目した。本研究は、ケトン体が負のエネルギーシグナルとなり、後脳上衣細胞に発現するケトン体輸送担体(MCT1)に感知され、生殖機能を抑制し、摂食量を増加させる、という仮説を証明する。 上衣細胞がエネルギーセンサーであることを証明するため、上衣細胞特異的にMCT1を欠損したマウス(Mct1-KOマウス)の作製を目指した。当該年度は、Mct1-KOマウス作製のために必要な2系統の遺伝子改変マウスのDNAコンストラクト作製を完了した。 また、上衣細胞の詳細な機能解析を行うため、上衣細胞にレポーター遺伝子の蛍光タンパク質を発現する上衣細胞可視化マウスを用いたin vitro解析を目指している。そこで、既に作出済みであった上衣細胞で蛍光色素Venusが発現するトランスジェニックマウス(Venusマウス)の表現型を解析した。フローサイトメトリーを用いて分取したVenus陽性細胞におけるRT-PCRの結果、上衣細胞のマーカー遺伝子であるVimのmRNA発現を検出した。また、低グルコース濃度の培地に上衣細胞を暴露し、細胞内Ca2+濃度変化の測定し、Venus陽性細胞の低グルコースへの応答性を解析した。その結果、一部のVenus陽性細胞で低グルコースへの応答性が検出された。これらの結果からVenus陽性細胞は上衣細胞であり、一部のVenus陽性細胞はエネルギーセンサーの役割を持つことが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、大きく分けて2つの実験(遺伝子改変動物の作製と解析、上衣細胞のin vitro解析)を行っている。遺伝子改変動物の作製に関しては、DNAコンストラクト作製に多くの時間を割いてしまったため、やや遅れている。しかし、上衣細胞のin vitro解析では可視化上衣細胞を用いた解析で、すでに平成25年度に計画していた実験も進めており、計画以上に進展している。これら2つの実験状況をまとめると、おおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として、可視化上衣細胞を得るための新たなマウスモデルの作製が挙げられる。本研究課題中では、上衣細胞をin vitroで解析するために上衣細胞のマーカー遺伝子のヴィメンチンのプロモーター(32Kb)制御下でレポータータンパク質であるVenusを発現したVenusマウスが作出された。しかし、平成24年度の研究において、既存のVenusマウスでは一部の上衣細胞のみでしかでVenusが発現していないことが問題となっている。そのため、Venusマウスで用いたヴィメンチンのプロモーター(3.2Kb)を含め、さらに上流の配列をプロモーターとして用いた新たなマウスモデル作出を試みる。
|