研究課題/領域番号 |
12J05321
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
荒木 淳 東京大学, 医学部附属病院, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 同種複合組織移植 / 肛門機能再建 / 人工肛門 / 創傷治癒 / WOC (Wound, Ostomy, Continence) |
研究概要 |
先天性肛門機能不全や難治性痔瘻、癌による切除や外傷など、いくつかの疾患による肛門機能の廃絶に対し、従来はcolostomy (人工肛門造設)が唯一の解決法であった。ストーマの管理の猥雑さに加え、整容面や精神面など患者やその家族が持つ問題は大きく、深い。これに対し、薄筋や大臀筋を用いた筋移行や人工括約筋などの肛門再建の努力がされてきたが、十分とはいえない。そこで我々は、機能的にも整容的にもcolostomyに優る可能性のある肛門移植(会陰皮膚・肛門・直腸・括約筋をふくむ排便コントロール臓器の全移植)モデルを、ラット・ブタ・ビーグル犬といった動物を用いた基礎実験を通して、研究開発している。ラットにおいて、直腸肛門移植片を摘出し、陰部動静脈と陰部神経を顕微鏡下に吻合することで自家移植モデルの作成に成功した。更に直腸肛門の解剖や排便機能の生理がヒトに類似するイヌにおいても、ICG蛍光血管造影法を用いて移植片血流の検討を行い(Araki J, etal. PLoS One 2012 ; 7 : e44310.)1これを基に移植術式は完成しつつある。また、ヒトのご遺体を用いた移植術式の検討も行い、脳死ドナーを模したcadaverから、Miles手術後を模したレシピエントへの模擬移植モデルが可能であったことを示した(Araki J, et al. PLoS One. 2013 ; 8 : e68977.)。今後、長期機能予後評価、骨盤底再建法、免疫拒絶と感染のコントロールなど解決すべき課題が多いが、顔面・前腕・喉頭・子宮など近年進歩著しいQOL向上を目的とした同種複合組織移植の一つとして、肛門移植はcolostomyに代わる新しい治療法となる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り、ICG蛍光血管造影法を行い、肛門移植術式の検討を行った。また、その結果を国内外の学会や、国際雑誌『PLos ONE』に報告した。更に、ヒトご遺体を用いた移植術式の検討を行うこともでき、こちらも『PLoS ONE』に報告した。
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今後の研究の推進方策 |
我が国においては、同種複合組織移植医療は欧米に比べて遅れていると言わざるを得ない。そのため、免疫拒絶や感染のコントロールといった点で、ノウハウが不足している状態にある。これまでにも国際学会などでできるかぎりの情報を得てはきたが、今後もこれまで以上に移植先進国との国際協力体制を強くするべきであると考えている。
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