研究課題
Bcslpは、ミトコンドリア内膜に局在する分子シャペロンである。細胞内のエネルギー産生に重要な呼吸鎖複合体のうち、シトクロムbc1複合体(複合体III)の会合・成熟に必須であり、特にRieske鉄硫黄タンパク質(Rip1p)の未成熟複合体IIIへの組込み(複合体IIIの成熟)に必要であることが分かっている。しかし、詳細なメカニズムについては、ほとんど明らかになっていない。このメカニズムを明らかにするため、昨年に引き続き解析を行った。昨年までの研究で、酵母Bcs1pの膜間部に位置するN末端領域44残基のうち、38残基以降がBcs1pの機能に必須であり、特に38番目の残基がある程度の疎水性を有していることが重要であると分かった。本年度は、38番目の残基を親水性アミノ酸(アスパラギン酸とアスパラギン)に置換した変異株(L38DとL38N)からミトコンドリアを単離し、複合体IIIの成熟への影響や未会合Rip1pの局在について、野生型Bcs1 (Bcs1_<WT>)およびbcs1欠失(△bcs1)と比較した。L38DとL38Nのミトコンドリアでは、Bcs1p自身の複合体形成はBcs1_<WT>と変わりないが、複合体IIIについては△bcs1と同じく成熟不全が起こっていることが分かり、未会合のRip1pが検出された。この未会合Rip1pのミトコンドリア内局在を調べたところ、マトリクスに存在していることが明らかになった。つまり、BcslpのN末端領域は内膜を隔ててRip1pのマトリクスから内膜の未成熟複合体IIIへの組込みに重要であることが分かった。また、Bcs1p自身についてもミトコンドリア内の局在を調べたところ、L38DとL38Nの膜間部のN末端領域がBcs1_<WT>とは異なる構造をとっている可能性が示唆された。また、化学架橋剤を用いて、膜間部のN末端領域における相互作用因子について検討したところ、L38DとL38NではBcs1_<WT>町とは異なるサイズの架橋産物が検出されたことから、相互作用様式に違いがあると考えられた。これらの結果は、国内外の学会で発表を行い、論文はBiochemical and Biohsical Research Communicationsに掲載された。
2: おおむね順調に進展している
(抄録なし)
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Biochemical and Biophysical Research Communications
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Journal of Natural Medicines
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http://gtc.egtc.jp/view/active/1312/b
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