研究課題/領域番号 |
12J05339
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
北村 直彰 慶應義塾大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | 分析形而上学 / 存在論 / カテゴリー論 / 新アリストテレス主義 / 存在論的依存性 / 形而上学的基礎性 |
研究概要 |
本年度の研究は主に、現代の存在論的探究において大きな注目を集めているTruthmaker概念に焦点を当てて行われた。 Truthmaker概念は、「真理は実在に根拠づけられている」という実在論的な直観のもとで、「真理の担い手を真にするもの」として導入され、その特徴づけを巡って多岐にわたる議論を巻き起こしている。本年度の研究では、Truthmakerの理論一般に対する主要な批判を取り上げ、錯綜した論争状況に置かれたTruthmaker理論の意義と射程を再検討することを目指した。特に、存在論におけるTruthmaker理論の役割を吟味するために、この理論の原理とされているものに対する批判を取り上げ、それがTruthmaker理論一般に対してどの程度の脅威を突きつけるものであるかを検討した。その結果として、Truthmaker理論は「世界に成り立つ様々な事実を存在論的に基礎づけるものとして何が必要とされるか」という問いを探究するための方法論的役割を果たすものとして特徴づけられることを明らかにした。そして、クワイン的な存在論的コミットメントの基準への対案を提示するという重要な側面がTruthmaker理論にあることも示された。 さらに、Truthmaker概念と「基礎づけ(grounding)」概念との関連を巡っても考察を行い、前者が後者によってどのように定義されうるかを検討した。また、Truthmaker概念と密接な関連をもつ形而上学的様相の概念についても考察し、D.Lewisによって提案された方法に基づく様相概念の還元が「様相的直観の説明」に関して深刻な理論的困難を抱えること、および、プリミティブな「世界」概念や「本質」概念を用いた還元のアプローチが自然に動機づけられることを明らかにした。 これらの成果は、現代形而上学における基礎的概念の解明に寄与するものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究において一定の解明が与えられたTruthmaker概念は現代形而上学の基礎概念に属するものであり、当該分野の概念的道具立てを整備するという本研究の目的の重要な一部が本年度の成果によって達成されたと言える。
|
今後の研究の推進方策 |
「基礎づけ」概念の解明に焦点を当て、この作業を(i)「存在論的依存性」概念との関連の解明、(ii)「基礎づけ」概念に基づく形而上学観の擁護と、優先性に基づく一元論の再定式化、という2つのステップに分けて研究を進める。
|