研究概要 |
本年度は母乳への移行および脳血液関門透過のデータセットの構築のため、残留性環境汚染化学物質の一つである有機フッ素カルボン酸(PFCAs)のマウスを用いた母乳分泌試験・体内動態試験を行った。詳細を下に記載する。また合わせて検証に用いるヒトサンプルの分析も行った。 1.母乳分泌試験 本研究ではPFOA(C8)を含む炭素鎖5から13(C5-Cl3)のPFCA類に注目しマウスを用いて母乳中への分泌を評価した。投与24時間後のマウスの血清中と母乳中のPFCAsの移行係数(母乳中 PFCAs/血清中PFCAs)はC7が1.56最も高く、C8からC13までは0.22から0.54の幅に収まった (C8:0.36,C9:0.34,C10:0.22,C11:0.23,C12:0.35Cl3:0.54)。このように炭素鎖長で大きく異なり、短鎖PFCAs(C7)と中長鎖PFCAs(C8-C13)の間には血中からの分泌において大きな差があることが確認された。 2.体内動態試験 炭素鎖5から14(C5-C14)のPFCA類についてマウスを用いて体内動態試験を行った。野生型FBV/NマウスにPFCAs(C5-Cl4)0.317μmol/kgを尾静脈注射投与し、24時間後に屠殺し糞尿を回収、血液・肝臓・腎臓・脳・脂肪組織を採取、各臓器中のPFCAs濃度を測定した。その結果野生型雄における尾静脈注射投与では投与後24時間までに短鎖PFCAs(C5-C7)の大部分の排泄が確認された(尿中:投与量の85-100%、糞中:同0.7-2%)。一方、中長鎖PFCAs(C8-Cl4)は尿中、糞中への排泄は少なく(尿:投与量の2%以下、糞:同0.7%以下)、肝臓おいて最も高濃度(2.8-5.4nmol/g(投与量の47-91%)で検出された。
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