研究課題
光ポンピング原子磁気センサを用いた生体磁気計測システム実現に向けて、原子磁気センサの感度向上を目的に、微弱な生体磁気信号を計測する上で障害となり得るセンサノイズ及び、環境磁場ノイズの低減に関して検討を行った。磁場応答信号強度が最も大きくなる最適な動作条件を実験により追求するとともに、ノイズ源となり得る加熱機構やレーザー光の受光部などを改良することでセンサノイズが低減することを確認した。また、グラジオメータ構成による環境磁場ノイズの低減効果に関して検討を行った。アルカリ金属を封入した単一のガラスセル内にボンプ・プローブの2種類のレーザー光をそれぞれ2本ずつ照射し、同一の条件下で2つの原子磁気センサを構築、それらの出力の差分を取ることで、2つのセンサで共通に測定される環境磁場ノイズの低減を図った。2系統の原子磁気センサの特性の違いから、差分による環境磁場ノイズ低減の効果が確認されなかった。磁場環境の不均一性などが原因と推測され、勾配磁場コイルなどを導入することで改善することが確認された。目標とするSQUIDを超える感度(HT/Hz1/2以下)の実現には至っていないが、光ポンピング原子磁気センサを用いて複数名を対象に心磁図(MCG)の計測や磁場分布計測を行った。MCGを正確に捉えるため、事前に測定したセンサの周波数応答を基に、周波数特性を補正する信号処理を測定信号に対して施した。計測結果は生理学的知見とも一致しており、光ポンピング原子磁気センサによりヒトのMCGを正確に測定することが可能であることを示し、MCGマッピングや信号源推定の実現可能性についても示した。これらの研究成果は国内学会にて発表するとともに学術論文誌に投稿・採録された。
3: やや遅れている
原子磁気センサを用いた心磁図計測に関しては、国内学会で発表し、英文誌"Physiological Measurement"にも投稿・採録され一定の成果を示すことができた。しかしながら、脳磁図(MEG)計測の実施を目指す上で、脳磁信号の計測に必要な感度の実現には至らず、視覚刺激に対するMEG計測を行うことができなかったため、原子磁気センサの感度向上という点でやや遅れていると判断する。
原子磁気センサの感度を向上させ、視覚刺激に対するMEG計測の実施を目指す。磁場変調や偏波面変調など昨年度には導入しきれなかった技術を用いることで感度の向上が見込まれる。センサの感度向上、MEG計測が実現できた場合、センサの小型化・多チャンネル化を目指す予定である。また、センサの多チャンネル化を目指す上で、複数のセンサの出力信号や磁場環境調整用コイルなどを総合的に処理・制御する計測システムの構築も視野に入れて研究を進める予定である。
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Physiological Measurement
巻: Vol.33, No. 6 ページ: 1063-1071
doi:10.1088/0967-3334/33/6/1063
第27回日本生体磁気学会大会論文集
巻: Vol. 25, No. 1 ページ: 180-181
第55回自動制御連合講演会 講演論文集
巻: (CD-ROM) ページ: 1219-1222
http://bfe.kuee.kyoto-u.ac.jp/index.html