研究課題/領域番号 |
12J05350
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鎌田 啓吾 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 光ポンピング原子磁気センサ / グラジオメータ / 脳磁図 / 事象関連脱同期 / 事象関連磁界 |
研究概要 |
光ポンピング原子磁気センサの感度向上に向けて、グラジオメータ構成による環境磁場ノイズの低減効果に関して検討を行った。2組のレーザーパスを用いることで2つのセンサ系統を一つのシステム内に構築し、その出力信号の差分をとることで2つのセンサで共通に測定される環境磁場ノイズの影響の低減を試みた。これまでの3軸の環境磁場相殺用コイルと一軸の勾配磁場コイルに加えて、もう一軸勾配磁場コイルを使用することで、磁場環境の均一性を向上させ、2つのセンサの出力特性を一致させた。また、レーザ光を受光する際に光ファイバを介さずフォトディテクタで直接受調する方式に変更した。その結果、2つセンサそれぞれの出力信号よりも差分した信号のノイズレペルが低く、グラジオメータ構成により感度が向上することを確認した。 ヒトを対象にした原子磁気センサによる脳磁図(MEG)計測を目標に、小型かっ可搬性を持たせたモジュール型の光ポンピング原子磁気センサを開発し、ヒトの頭部を模した生体ファントムから発生する磁場を計測することで開発したモジュール型の光ポンピング原子磁気センサがヒトの脳磁図を計測可能かどうか検証した。その後、開発したモジュール型の光ボンピング原子磁気センサを用いて、ヒトを対象に磁気シールド内に横たわる被験者の後頭部(視覚野)付近の脳磁図計測を行った。実験では内部を照明で照らした磁気シールド内で開眼状態と閉眼状態を切り替えるように被験者に指示した。結果として、閉眼時に対し開眼時にα波帯の信号強度が減少する事象関連脱同期(ERD)と呼ばれる現象や、開眼・閉眼後数百ミリ秒に大きく信号ピークが生じる事象関連磁界(ERF)を確認することができた。以上の結果より、開発したモジュール型原子磁気センサによる、ヒトMEG計測の実現可能性を示すことができた。これらの研究成果は、国内・国外の学会おいて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
グラジオメータ構成導入による感度の向上など、ある程度研究は進展した。また、開発したモジュール型原子磁気センサを用いた脳磁図計測を実現し、国内・国外学会で発表することで一定の成果を示すことができた。しかしながら、原子磁気センサの多チャンネル化やモジュールの小型化、アレイ化などが実現できておらず, 脳磁図の多チャンネル計測が実施できていないため、やや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
原子磁気センサの更なる感度の向上を目指し、センサ構成の改良を行うことで、より微弱な生体磁気信号を計測可能なセンサシステムの実現を図る。グラジオメータ構成を組み込んだモジュール型原子磁気センサの開発や、光学部品の少ない新たなグラジオメータ構成に関する検討を行い、多チャンネルの原子磁気センサシステムやより小型のモジュール型原子磁気センサの実現を視野に研究を進める予定である
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