研究課題/領域番号 |
12J05366
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
菅原 翔 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 社会的報酬 / 運動学習 / 記憶の固定化 / 睡眠 / 脳機能イメージング |
研究概要 |
「褒められる」ことが動機づけを増大させ運動パフォーマンスの促進に寄与することは以前から知られていたが、運動スキルの定着というより直接的プロセスを介してパフォーマンス改善に寄与するかについては検討されてこなかった。これまでの研究で、「褒められる」ことが運動スキルの定着を促進することでパフォーマンス改善に寄与することが明らかとなった。この成果は海外学術誌に掲載され、国内外から多くの反響を得た。この非常に関心の高いトピックを実践現場へと応用する為には、(1)なぜ促進されるのかという機序を明瞭にすること、(2)応用可能な範囲を検討することが不可避である。 まず、現実的な応用対象である子どもでの研究をスタートするにあたり、小学生での運動技能定着を扱うこととした。子どもの技能定着過程が成人と同じであるかは議論が存在する。鳥取大学の協力のもと、運動学習後の睡眠時間が技能定着の程度の正の相関関係にあることを立証した。この成果は、子どもの技能定着が睡眠依存性という成人と同様の性質を有することを支持するものであり、子どもにおいて成人と同様の促進効果を検証可能であることを示唆している。 次に、神経科学的機序を解明する為に、運動学習の直後に「褒められている」際の機能的核磁気共鳴画像(fMRI)を取得する実験を行った。本実験では、「褒められた」ときに報酬関連領域(特に腹側線条体)の活動量大きいほど、技能定着の程度が高いという仮説を検証することを目的としている。25年度前半にはデータ取得を完了する予定であり、社会的報酬と技能定着の直接的関連が明らかとなることを期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、社会的報酬による技能定着促進効果についての論文が海外誌に掲載され、国内外の多くのメディアを通して一般の関心を得ることができた。さらに、神経機序の解明および適用範囲の検討ともに、具体的な実験が進行中であり一部には成果が得られている。一方で、睡眠中のプロセスに関する検討は当初の計画よりも、基礎的な解析手法の確立からスタートする必要が生じている。これに関しては、睡眠中の脳波-fMRI同時計測実験を実施中であり、解析手法の確立を目指している段階である。以上のことから「おおむね順調に進展している」との評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
神経機序の解明に関しては、現在実験が進行中であるため次年度前半で完遂し、後半で成果を論文とすることを目指す。さらに、睡眠中のプロセス解明に向けて基礎的な解析手法の検討を推進し、次年度後半では「褒められた」後の睡眠活動について脳波-fMRIの同時計測によって検討することを目標とする。 適用範囲の検討に関しては、引き続き子どもを対象とした実験を継続的に推進していく。それと平行して、意味記憶や発声発話など異なるモダリティーの記憶における効果を検討する実験を計画し、成人を対対象として実施する予定である。
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