研究概要 |
本年度の研究は大きく以下の3つに分かれる。 研究1 : 空間情報の連続性に関する研究 本研究では複数のランドマークの位置関係を学習する際に, 特に自己視点(Aを右に曲がるとBが見える)において, 実際に移動を行う順で学習を行うことで正確な空間表象が構築されることを明らかにした。このことは移動が必要な大規模空間の学習が単なるオブジェクトの位置関係と異なり, 大規模空間の認知に移動が影響を与えていることを示している。研究1は認知科学の国際誌であるCognitive Prtocessingに掲載された。さらに所属機関のHPにプレスリリースを発表し, 日刊工業新聞に掲載された。 研究2 : 空間学習・探索時の方略の個人差に関する研究 研究2では空間学習・探索時に用いる方略の個人差を質問紙を使って検討した。具体的には俯瞰視点と自己視点のそれぞれを取る程度を質問紙で数値化した。その結果年齢や性別がこれらの方略に影響を与え, さらにこれらの方略が空間学習の際のスキーマや方向感覚に影響を与えることを明らかにした。研究2については論文として発表するべく原稿の準備を進めている。 研究3 : 経路方略の記述に関する研究 研究2のような個人間での差ではなく, 経路の特性という個人間で共通の要素がどのように経路方略に影響しているのかを検討した。具体的には地図上の経路を記述するという課題で様々な要因が経路表境に影響を与えることを明らかにした。特に記述の回数の影響は顕著であり, 空間学習の回数や1回あたりの学習量が増加すると自己視点から俯瞰視点へと記述が推移した。このことは学習を繰り返すことによって空間表象がより俯瞰的視点の性質を持つという先行研究と一致するものである。
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今後の研究の推進方策 |
研究1についてはその知見が文字情報による空間学習だけではなく, 動画やVR空間といった, より視覚に依存する状況でもあてあまるのかにっいて検討を行う。研究2についてはなるべく早い段階で論文として投稿する。研究3については経路の特性という個人間での変数と, 方向感覚や空間探索時の方略といった個人内での変数がどのように相互作用し, それによって行動が決定されるのかということを検討する。
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