研究概要 |
本研究はヘテロティック超弦理論から素粒子現象論的な模型を造るという研究のなかでも特にNS5-ブレーンと言う高次元オブジェクトを有効活用することに主眼を置いたものである。特に2011年に行ったTaub-NUT結晶の研究[H. Imazato, S. Mizoguchi, M. Yata (2011)]での結果をより現実的なものとする、もしくは他の着眼点から眺めるということを目的としている。24年度の繰越研究では2012年に行った研究[S. Mizoguchi, M. Yata (2012)]の延長として超弦理論と非線形シグマ模型の間の関係性をシグマ模型側から論ずることを計画していた。しかし、希望していた海外渡航が受入教官側の都合により取り消しになってしまったので国内の大学施設を頼りに具体的な交差NS5ブレーン系の構築を調べることにした。 Taub-NUT結晶をより現象論的に扱うためには10次元中に交差NS5-ブレーンが格子状に並んだ系を仮定しなければならなかったが、そのような解の存在は今まで確認されていなかった。そこで、そのような解を具体的に確認するために既存のlocalCalabi-Yau多様体のT双対操作によりできるかどうかについて検証を行った。具体的には6次元多様体としてCalabi空間を採用し、この空間に対してT双対を行い5ブレーンの解となりえるかどうかにっいて検証を行った。この空間を選択した理由はCalabi空間が4次元のhyperKahler多様体として知られているEguchi-Hanson空間を6次元空間に拡張した解であり、Eguchi-Hanson空間のT双対が2枚のNS5-ブレーンが平行に並ぶ系にあたることから、Calabi空間のT双対は交差NS5-ブレーンがバルク中に並ぶ解になると予想できたからである。しかし、残念ながらCalabi空間のT双対からは期待される交差NS5-ブレーン系は得られなかった。原因は元の多様体に5ブレーン電荷の源となるモノポール電荷がなかったことであり、今後同様な操作でブレーン解を得るためにはモノポール電荷を運ぶための対称性を含んだ多様体を選択しなければならないことが解った。
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