研究概要 |
反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)や経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は脳の興奮性を変化させることができることから,うつ病,パーキンソン病,脳卒中の後遺症,慢性落痛,ジストニアなどの治療に応用されている.しかしながら,rTMSやtDCSの臨床応用に関する報告では,疾患に対する効果や有効性は確認されているものの,刺激を行う際の刺激条件が客観的に定められていないとう問題がある.そこで,本研究ではrTMS・tDCSの刺激効果を定量的に評価し,疾患を入力することで,rTMS・tDCSの最適な刺激条件が出力されるシステムの開発を行う. まず,運動野において,μ波とrTMS・tDCSの刺激効果の関係性について調べた.その結果,μ波のERDは促進性の刺激であるAnodal tDCSにより,有意的に増加し,抑制性の刺激である1Hz 110%RMT rTMSとCathdal tDCSにより有意的に減少した. 次に,rTMSの刺激条件と刺激効果の関係性を調べるために,抑制効果を誘発すると言われている1HzのrTMSを左半球の第一次運動野に与え,運動誘発電位(MEP)を計測することで,大脳皮質興奮特性の変化を評価した.更に,その実験結果を用い,重回帰分析によりrTMSの刺激効果予測モデルを作成した. 実験により,刺激強度が強いほど,パルス数が多いほど,抑制効果が強く生じることが分かり,MEPの振幅変化と刺激強度,パルス数の関係が非線形である可能性があることが分かった.また,樹木モデルを計測データにあてはめ,独立変数間の交互作用を調べた.その結果,刺激強度とパルス数の間に交互作用がある可能性が示唆された.これらの結果から,初期のモデルに,刺激強度の二乗,パルス数の二乗,刺激強度とパルス数の積を含むモデルを用い,重回帰分析を行うことでrTMSの刺激効果予測モデルを作成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では,シミュレーションにより,rTMS・tDCSが誘発する大脳皮質興奮特性の変化を評価することを予定していたが,生体の複雑さから,被験者毎の興奮特性をモデルとして作成することは困難であった.そこで,実験を行い,脳波,筋電位を計測することで興奮特性の変化の定量化を行った.その結果,rTMSの刺激効果は評価できつつあるが,研究計画に少し遅れが生じた.
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今後の研究の推進方策 |
ます,rTMSの刺激効果予測モテルの精度の向上を試みる.被験者のコンディションにより rTMSの効果は影響を受けるため,rTMSを与える前の状態(安静時運動閾値,rTMSを与える前のMEPの波形)などから,計測データに違いがあるかを調べる.次に,tDCSにおいても同様のモデルを作成する.tDCSにおいては,MEP計測時にtDCSの電極を取り外し,TMSにより計測しなければならないため,刺激部位が動く可能性があるので,MRIと赤外線カメラを用いた刺激位置決め装置で場所の確認を行いつつ実験を行う.最終的にrTMS・tDCSの治療応用システムの開発
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