研究課題/領域番号 |
12J05431
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
村山 恵司 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | 人工核酸 / 蛍光性核酸検出プローブ / Molecular Beacon / RNAモニタリング / 細胞内イメージング / SNA |
研究概要 |
近年、DNAやRNAの検出・可視化ツールとしてMolecular Beacon (MB)が注目されている。しかし、MBはDNAで構成されているため細胞内では酵素分解により分解・バックグラウンド発光してしまう、stem部位のブリージングにより消光能・検出感度が低いという問題が存在している。そこで人工核酸SNAのみを用いたMB (SNA-MB)を設計・合成した結果、酵素耐性の大幅な向上とS! B比(シグナルバックグラウンド比)930倍という超高感度化に成功した。そこで当該年度はこのSNA-MBの詳細な機能評価と、細胞内のmRNAイメージングを試みた。まずSNA-MBの検出下限を調べた。その結果、SNA・MB (200nM)に対し、200pMのTargetRNA存在下で約1.8倍の蛍光強度を示したことから、SNA・MBは1/1000当量というごく微量のTargetを検出できることが示された。次に、配列特異性を調べるため、TargetRNA存在下、Targetと一部だけ同じ配列を持つNon-targetRNA存在下でそれぞれ蛍光測定を行った。その結果、Non-targetRNA存在下ではTarget RNA存在下に対し約0.3%程度の蛍光強度増大しか示さなかった。以上のようにSNA-MBは、低い検出下阪と高い配列特異性を併せ持ち、より正確にTarget核酸の検出を行うことができるプローブとして極めて有用であることが示された。次に、緑色蛍光タンパク質eGFPをコードするmRNAをTargetとしたsNA-MBを設計し、これを用いて細胞内RNAイメージングを試みた。HeLa細胞にeGFPをコードするプラスミドをトランスフェクションし、eGFPを強制発現させた後に固定化、界面活性剤TritonXにょってMBを導入し、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。その結果、SNA-MBのみを導入した細胞ではCy3の蛍光は見られなかった。それに対し、プラスミドとSNA-MB両方が導入された細胞ではたeGFPの蛍光に加え、SNA・MBとTargetRNAの結合によるCy3の蛍光が観測された。以上のように、SNA-MBを用いて細胞内のmRNAを可視化することに成功した。このSNA-MBを用いることで、細胞内のRNAの特異的なリアルタイムイメージングが可能となり、細胞内での詳細なRNA挙動解析が期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
従来の核酸検出プローブに対し、今回設計したSNA-MBの優位性を明確にすることができた。また、最終的な目標に近い条件で、細胞内のmRNAイメージングに成功した。これらの結果から、当初の計画を超えて、今後様々な応用へと展開していくことが期待できる。以上のことから、当初の計画以上に進んでいると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
SNA-MBを用いて、生きた状態の細胞におけるRNAイメージングを行う。現在試行中だが、リポフェクション法によってSNA-MBを導入するとTarget非存在下でも蛍光を発してしまうことが問題となっている。そこで今後は他の導入法を用いて最適な導入条件を検討する予定である。また、現在のON/OFF型の設計では細胞内への導入状態が不明確という問題がある。そこでFRETを用いたレシオメトリック型のSNA-MBや別の波長の色素を同時に導入したSNA-MBを設計し、細胞内への取り込みの状態も可視化していきたい。
|