研究課題/領域番号 |
12J05447
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
太田 拓巳 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | アルドステロン / 時計遺伝子 / 3β-HSD / 副腎球状層 |
研究概要 |
高アルドステロン血症は内分泌性高血圧の中で最も頻度の高い病因である。しかし、アルドステロン合成阻害薬として唯一市販されているトリロスタンは、ステロイド合成の必須ステップを触媒する3β-HSDを非選択的に阻害するため、全てのステロイド産生を阻害する欠点が指摘されていた。そこで申請者は、アルドステロン産生細胞である球状層に特異的に発現している3β-HSDのサブタイプに注目した。本研究では、球状層特異的3β-HSDに対する選択的阻害薬の開発や、球状層特異的3β-HSDの発現調節機構の解明を通して、新しい機序の降圧薬の開発を目指した。まず、球状層特異的3β-HSDの発現解析に用いるため、マウスの球状層特異的3β-HSDであるHsd3b6に対する抗体を作製した。得られた抗体は免疫細胞化学、免疫沈降、免疫組織化学によりHsd3b6を特異的に認識することを確認した。さらに、球状層細胞の分子時計を標的とした高血圧治療の可能性を探るため、アルドステロン産生制御における分子時計の役割を探索した。AngIIに対する応答性に日内変動が存在するのかを確認するため、ラット球状層細胞の初代培養系を構築した。まず、培養した細胞が球状層細胞のマーカー遺伝子Cyp11b2の発現、及びAngIIに対する応答性を保持しているのかを確認した。抗Cyp11b2抗体による免疫染色を行ったところ、約7割の細胞から陽性反応を得た。さらに、培養した細胞をAngIIにより刺激したところ、培地中へのアルドステロン分泌が有意に増加した。次に、ラット球状層細胞が初代培養系でも概日リズムを示すのかを調査した。するとmPer2promoter-lucトランスジェニックラットから分離した球状層細胞は100時間以上にわたり概日リズムを維持した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りマウス球状層特異的3β-HSDの抗体の作製を完了した。またさらに、ラット球状層細胞初代培養系を構築し、ラット球状層細胞が初代培養系でも概日リズムを保持することを確認した。このラット球状層細胞初代培養系を用いることで、副腎での生体時計機能の解明やアルドステロン分泌における時刻依存性の解析が可能になり、計画は順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に構築したラット球状層細胞初代培養系を用いて、球状層細胞における分子時計の機能探索、特に球状層特異的3β-HSDの分子時計による制御機構を探索する予定である。また、球状層特異的3β-HSDのアルドステロン産生における重要性を示し、かっその発現制御に関与する因子を特定するために、球状層特異的3β-HSDがAngIIにより誘導されるのか、またその誘導メカニズムの解明をヒト副腎皮質由来の細胞株であるH295R細胞を用い行う予定である。
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