研究課題
シロイヌナズナのミロシン細胞分化を制御する因子AtMDFI (Arabidopsis thaliana Myrosin Cell Differentiation Factor 1)とそのゼニゴケ相同遺伝子MpMDF1 (Marchantia polymorpha MDF1)に着目して研究を遂行した。MpMDFIの機能を解析するために、相同組み換え法を用いてノックアウト系統を2種類作製した。MDFlはbHLH型転写因子であるので、DNA結合領域であるbHLHドメインを欠損する系統を1種2株作製した。また、MDF1が分類されるbHLH型転写因子サブファミリーIaグループに保存されているC末端領域を欠損する系統を1種1株作製した。取得できたノックアウト株はすべて雌株であった。MpMDF1は2n世代の胞子体で特異的に発現していることをすでに明らかにしているので、ノックアウト株の雄株を取得し、ノックアウト株の雄株と雌株を交配し2n世代の表現型を観察する必要がある。そのため現在は、取得した雌株のノックアウト株を野生型の雄株に交配し、次世代でのノックアウト雄株の取得を進めている。atmdf1変異体でのミロシン細胞の発達度合いを定性的に評価するために、ミロシン細胞レポーター遺伝子ProTGG2 : GUSをatmdf1変異体に導入した。GUS染色によりミロシン細胞を検出したところ、atmdfl変異体ではミロシン細胞はまったく検出されなかった。以上の結果から、AtMDF1はミロシン細胞分化に必須の因子であることがわかった。また、他のミロシン細胞レポーターであるMYROOI : GUS背景でエストロゲン添加時にAtMDF1が過剰発現される株(Estro : MDF1)を作製した。エストロジェン添加時に、Estro : MDFI株では葉全体にGUS染色が観察された。加えて、エストロジェン非添加時にGUS染色がまったく観察されない根及び胚軸でも部分的にGUS染色が観察された。以上の結果から、MDF1の過剰発現が様々な種類の細胞にミロシン細胞の性質を付与することができることがわかった。変異体の結果と併せて考えると、MDF1はミロシン細胞分化に必要十分な因子であることが示唆された。これまでの研究成果の一部をまとめ、5報の学会誌への発表(1~5)、及び2件の学会発表(【国内】1・【国外】1)として成果発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
ゼニゴケMDF1転写因子の解析に必須のノックアウト変異体の単離に成功した。これによりゼニゴケMDF1の解析に概ね目処が立った。変異体は、GFP, Myc等のタグを付加したMDF1の機能性の確認などにも利用できることから大変有用なツールになることが期待される。シロイヌナズナのMDF1の機能解析においては、MDFIがミロシン細胞の分化に必要なだけでなく、ミロシン細胞分化に十分であることが過剰発現体の結果から明らかとなった。以上の結果は、研究目的、及び研究計画と照らし合わせて考えると「②おおむね順調に進展している」に該当すると判断できる。
シロイヌナズナのMDF1の解析は論文としてまとめる段階にあるので、論文の作製を行う。また、シロイヌナズナMDF1の相互作用因子・下流標的因子の候補を複数単離しているので、それらの機能解析を変異体・過剰発現体を用いて行う。同時に、発現部位の解析・MDF1との遺伝学的相互作用の検証も行う。これらを併せて、より包括的なミロシン細胞分化の解析が行えると期待できる。ゼニゴケMDF1変異体の雄株を単離し、既に取得している雌株と掛け合わせることにより、2n世代でのMDF1の機能解析を行う。平行して、変異体背景にGFP融合型MDF1をMDF1プロモーターで発現させた後、交配を行い、2n世代でのMDF1タンパク質の局在・安定性の評価を行う。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件)
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