シロイヌナズナのミロシン細胞分化を制御する因子FAMAに着目して研究を行った。FAMAの下流因子を探索するために比較DNAアレイ解析を行った。はじめに、ミロシン細胞分化亢進変異体syp22と野生型植物体の遺伝子発現パターンを比較し、931遺伝子がsyp22変異体で上昇していることを明らかにした。これらの遺伝子と、すでに報告されているエストロジェン誘導型FAMA過剰発現株を用いたFAMA誘導後4時間で発現が上昇している遺伝子を比較した。32遺伝子が共通して発現上昇していた。これらの因子は、ミロシン細胞系列で働く新規因子と考えられた。次に、SYP22とFAMAの関係性を解析した。FAMApro:GUSをsyp22変異体に導入したところ、葉の内部でのGUS発現領域が拡大していた。リアルタイムPCRでFAMAの発現量をsyp22変異体と野生型株で比較したところ、syp22変異体で3-7倍にその発現量が上昇していた。これらの結果から、「syp22変異体では葉の内部でより多くの幹細胞がFAMAを発現し、結果的にミロシン細胞数が増加する」という仮説が浮上した。 ゼニゴケにおけるCRISPR/Cas9実験系の改良を行った。Cas9を、シロイヌナズナでの発現にコドンが最適化されているCas9(AtcoCas9)に変更した。ARF1遺伝子の破壊をモデルとして、AtcoCas9を用いたCRISPR/Cas9によるゲノム編集効率を計測したところ、既知の系に比べて100-1000倍程度の効率の上昇がみられた。次に、ポジティブセレクションを行わない系で、ARF1遺伝子のゲノム編集効率を測定したところ、T1植物16個体中12個体で欠失・挿入・置換といった変異が導入されていることがわかった。以上の結果から、AtcoCas9を用いることで、ゼニゴケにおけるゲノム編集効率が大幅に上昇することがわかった。
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