研究課題/領域番号 |
12J05462
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
安井 早紀 京都大学, 野生動物研究センター, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ゾウ / 社会行動 / 接触 |
研究概要 |
24年度の主な研究目的は、アジアゾウにおける接触を伴う社会行動の機能を明らかにすることであった。そのため、まずタイのスリン・ゾウ研究センターでの行動調査を中心に行った。合計で約半年間スリンに滞在し、ゾウの行動データを収集した。現地でもともと組織されていたメスゾウの集団に加え、センターにいるゾウの中から計11頭のゾウのゾウ使いを雇い、村内の放飼場に連れてきてもらうことで、観察を行うこともできた。この調査では、個体識別に基づき、個体間交渉における行為者と受け手、交渉時の体勢、交渉のタイプなどをビデオカメラ、ボイスレコーダーなどを使用して記録した。このような詳細な観察は、森林性のアジアゾウの場合、野生下でデータを取ることが非常に難しく、飼育下で行うことに意義があると考えられる。またセンターには約200頭のゾウがおり、24年度の調査を通して約40頭分の観察データを集めることができた。ゾウは大型動物であるゆえ、1か所にこれだけ多くの個体がいる環境は他にはなく、本研究を遂行する上で非常に効率的に調査が進められる適切な調査地で調査を行うことができた。また、11月にはスリンで収集してきたデータの一部をまとめて、日本動物行動学会で発表を行った。10月にはブラジルにおいて国際ワークショップで国内の動物園で観察した結果をポスター発表し、インドの野生アジアゾウの研究者をはじめ、多くの研究者や学生と意見交換を行うことができた。また、本研究の目的である遺伝子からみるゾウの社会という点においては、修士課程で行ったゾウの性格と遺伝子との関連についての研究成果をまとめ、Zoo Biologyに掲載された。さらに、現在の調査地であるスリン・ゾウ研究センターの紹介を、Animal behavior and Managementに資料として投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度は、タイでの調査は順調に進み、アジアゾウの社会行動に関する十分なデータを収集することができた。また、研究成果のまとめに関しても、学会発表2件、論文2本(1本投稿中)と、調査期間が長かったことを考慮すると順調に進んでいると考えられる。タイで収集したデータの分析、まとめはまだこれからの部分が大きく、今後早急に進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
まず、24年度に収集したデータの分析を最優先して行う。さらに本年度は主に24年度に収集したデータをまとめて、英語論文や博士論文の執筆に力を入れて研究を遂行する。また、不足しているデータの収集のためのタイへの渡航や、野生アジアゾウや飼育下または野生のアフリカゾウの調査に向けて、インドやタンザニア・ケニアへの渡航も計画する予定である。
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