本研究の目的は、知的障害児や発達障害児におけるパーソナリティの個人差について調べ、その個人差が彼らの行動全般にどのような影響を及ぼしているのか、障害特性との関連も踏まえながら明らかにすることである。 本年度の前半では、昨年度まで行っていた知的障害児・者におけるパーソナリティ特性の一つである衝動型-熟慮型の認知スタイルと運動能力の関連の発達的変化についての研究をまとめ、関連する国際誌に論文を投稿し採択された。 また本年度も前年度より引き続き、知的障害のない自閉症スペクトラム障害(ASD)児約30名を対象として、認知、運動、社会性の3領域から心理機能の個人差を総合的に評価すると共に、面接法や質問紙法によるパーソナリティ特性や障害特性についての調査を対象児や対象児の保護者に行い、測定結果の変化等について検討した。更に、本年度は前年度に質問紙法によって評価したパーソナリティ特性(気質)の一つであるeffortful controlの個人差と、ASD児の心理機能との関連について検討した。よく知られた実行制御課題であるハノイの塔(ToH)課題を取り上げ、構音抑制の有無がToH課題の成績に及ぼす影響を見ると共に、effortful controlの個人差との関連について検討した。この実験条件は、先行研究を参考としてASD児における内言使用能力を評価するために設定したものである。測定の結果、ASD児においても定型発達児のように構音抑制条件下でToH課題の成績が低下する児が存在している一方で、成績の低下しない児も存在しており、構音抑制の効果に個人差が認められた。しかし、こうした成績の個人差とeffortful controlの関連はさほど明確でなく、ASD児におけるeffortful controlの個人差と心理機能の関連について、更に検討していく必要がある。
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