本年度は、昨年度までに検討を行ってきた、特異的な金属選択性を有するグリシンとアミドを核構造として有する新規抽出剤D2EHAGを、金属の液膜分離システムの一種として近年着目されているポリマー包含膜(PIM)システムに展開した。 PIMの調製においては、広く用いられているポリマーであるトリ酢酸セルロース(CTA)とD2EHAGを組み合わせることにより調製した。調製したPIMを用いて、近年、各種情報媒体でも盛んに報道されている希土類金属の分離に着目し、研究を行った。本抽出剤および本PIMシステムを用いることで、希土類金属の一種であり、燃料電池の電解質材料や航空機等の高耐久性材料として需要が急増しているスカンジウム(Sc(III))を、その他の希土類金属(Nd(III)やDy(III))から高効率に分離することに成功した。また、抽出剤とSc(III)が有機溶媒中で形成する錯体の推定等を行った。この成果は、本年度、RSC Advances誌に掲載された。 また、本年度は最終年度ということで、学会発表を重点的に行った。本研究で主に取り組み、成果の得られた”レアメタル高選択的な新規抽出剤の開発”および”新規抽出剤の膜分離プロセスの開発”に関して、溶媒抽出国際会議 (ISEC 2014)やイオン交換国際会議 (ICIE 2014)等の国際学会、および溶媒抽出討論会、日本膜学会膜シンポジウム等の国内学会にて研究発表を行った。これらの研究発表においては、国内外の研究者より高い関心が寄せられ、化学的視点、および実用化を想定した工学的視点からのディスカッションを行った。
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