(1)パラジウム触媒による環化反応を用いたスピロインドール誘導体の合成 報告者が見出したスピロ環化反応は、インドールの分子内求核付加反応に続く外部求核剤による分子間反応が進行することでスピロインドリンを与える。一方、外部求核剤が反応することなく、β-水素脱離反応が進行することで少量のスピロインドールを生成する。副生成物として得られたスピロインドールは、天然物モチーフとして有用な構造を有しているため、その合成法を確立することも重要であると考えた。そこで、スピロインドール化合物を選択的に与える条件の最適化を実施した。リガンドにdppeを、塩基にBnNH_2とCs_2CO_3を用いた際に、望みのスピロインドールが良好な収率で得られることを見出した。 プロパルギルパラジウム錯体を用いた触媒的不斉反応は、2014年に報告された2例に留まっている。報告者が見出したスピロ環化反応の不斉化を検討したところ、SEGPHOSリガンドを用いた際にスピロインドリンとスピロインドールを65-71%eeで与えることを見出した。今回報告者が観察したエナンチオ選択性は、プロパルギルパラジウム錯体を用いた触媒的不斉化の中で最も高いものであった。これらの結果は、プロパルギルパラジウム錯体を用いた不斉反応の潜在的有用性を示すものであると考えている。 (2)Apparicine基本骨格構築法の開発 既知のApparicine類の全合成経路は、合成の最終段階における環化反応に改善の余地が残されている。報告者は(1)の反応を基に、パラジウム触媒によるインドリルプロパルギルクロリドの連続環化反応を用いたApparicine基本骨格の一挙構築法の開発に着手した。多様な環化前駆体を用いて検討を行ったが、いずれにおいても望みの連続環化体は得られなかった。また、金触媒を用いた新たな経路の開発に着手したが成功には至らなかったため、時間的制約から本合成研究を中止した。
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