研究概要 |
本課題は, 日本および日本と類似した問題を有するノルウェー王国を対象として, 第一に森林資源利用の地域差を整理し, 第二に地方分権化下での林野行政の構造変化と助成・規制施策の変遷を精査して, 森林資源の利用と林業助成・規制施策との関係性を比較検討することを目的としている。本課題では, まず, 採用第1年度目に国際機関(国際連合, 世界銀行)の資源統計を活用した森林資源量の利用について国単位で比較した。 採用第2年度目(平成25年度)では, 国際統計の精度について検討を行い, 前年度に得た結果が支持されるのかについて統計資料の統合と既往文献のメタ解析の手法を用いて検討した。その結果, 森林資源の蓄積量は特にコンゴ民等のアフリカ地域を中心として欠損値が多く発生しており, 森林資源の利用量(素材生産量)については違法伐採の発生により中所得国のインドネシア, ブラジルを含むアジア・南米地域において生産量の過小評価の可能性が示唆された。1990年代以降にこうした森林資源の蓄積量と利用量の両方が得られる国数は全世界の半数未満にすぎないものの人口カバレッジでは9割以上に相当することが判明し, 採用第1年度目に得られた先進国の森林資源の利用がとくに低迷しているという結果は支持された。 また, 地方分権化の下での林野行政の構造変化と助成・規制施策の変遷について, 対象国を含む欧州の複数国において既往文献および行政資料を収集・精査し, 林業セクターにおける地方への権限委譲の見直しについて考察した。
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