研究課題
本研究の目的は、既存のシリコンテクノロジに量子情報分野を融合する足がかりを作ることである。またこの目的を達成するために、シリコン量子ドット中の電子スピン状態を制御し、量子コンピュータの基本ゲートである回転ゲートや制御ノットゲートを実現することを目標としており、その研究過程で、スピントロニクスへの応用も考え、Si中の電子スピン緩和時間測定、要因特定と、ダイナミクスの物理解明を行う。今年度は、シリコン二重結合量子ドットの少数電子系実現に向けての測定技術開発と、高周波用ゲートを用いた単電子スピン共鳴実現に向けた新たな素子構造の提案と磁場計算を行なった。前者については、従来受動的にのみ用いられていた電荷センサを、量子ドット中の電子のエネルギーを変調するために用いる技術を開発し、将来の量子ビット多重集積化に向けた重要な足がかりを得た。後者については、化合物半導体系で用いられている電子スピン制御法を更に向上させ、同一電極で電場に加え新道磁場を印加させる構造を提案した。またシミュレーションソフトによって磁場を計算し、この構造により電子スピンを良く制御できることを示した。以上の結果は私が目標とする単電子スピン共鳴の実現に向けた重要な技術であり、最終年度における目標達成へ大きく前進した。制御ノットゲートなどの多量子ビットのデモンストレーションに向けても、本年度における電荷センサやゲート電極の高機能化による新な量子ドット構造が大きく生きてくる。また上記の結果は私の研究だけでなく、単電子トランジスタやスピントロニクスなど、様々な分野においても活用することができると考えている。
2: おおむね順調に進展している
1年目の年次計画に記載した単電子スピン共鳴そのものは達成できていないが、2年目の二重結合量子ドットの集積化による2量子ビットに向けた技術開発も行なっており、全体としてはおおむね順調に進展していると考えている。
提案した高機能素子の作製と低温測定、及び高周波印加のための測定系立ち上げを進め、単電子スピン共鳴を実現する。これまでに得た知識、結果を用いて、これから更に研究速度を向上し、最終的な目標実現を行う。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 52 ページ: 04CJ01-1-04CJ01-4
10.7567/JJAP.52.04CJ01