当該年度の前半では、昨年度に収集した史資料の整理・デジタル化を行った。特に、昨年度にモロッコにて収集したアラビア語史資料などを整理・データベース化することで、スペインとモロッコでのモリスコ研究の相違を明らかにすることが可能となった。またインターネットを通じて、関連する刊行一次史料や研究書などを購入した。 上記の調査を踏まえて9月22日には、国際学会II Congreso Ibero-Asiático de Hispanistasにて"Losmoriscos y su conceto del mundo : desde la práctica islámica la idea apocaliptica"という題で、口頭発表を行った。本発表では、改宗にともなうモリスコのイスラーム信仰の秘匿と彼らの世界観についてアルハミーア史料から分析した成果を、スペイン語で発表した。本報告については、同題名の論文が現在公開準備中である。また、同月28日にはスペイン史学会第154回定例研究会にて「16世紀スペインにおけるモリスコの世界観 : イスラーム的実践と終末論から」という題で口頭発表を行った。本発表では、モリスコたちのイスラーム的実践と終末論の関連について論じた。 また今年度は2月から3月にかけてスウェーデンとスペインで、27日間の史資料調査を行った。特にスウエーデンのウプサラ大学での調査は、これまで所在や文書番号が不明確であったアルハミーア史料三点の所在を明らかにした点で大変有意義である。スペインでは、前年に引き続き、国立図書館やスペイン科学研究高等会議での調査を行う一方で、国立歴史文書館ではモリスコの終末論や救世主思想に関連する異端審問記録を閲覧した。加えて、ガルシア・アレナル教授からは、スウェーデンにて発見した史料について研究交流を行い、本史料とスペイン国内の他史料との比較を行うことについて助言を得た。
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