研究課題/領域番号 |
12J05656
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
湯川 やよい 広島大学, 教育学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | ライフストーリー / 大学院教育 / 発表倫理 / ハラスメント / 不正行為 |
研究概要 |
本研究の目的は、研究室教育の指導関係で生じる不正行為とハラスメントの連関に、ライフストーリー法を軸とした多様な研究法を組み合わせて接近することで、「教員一学生間の不可視化された協働ワーク」の過程・背景を広義のジェンダー研究の視点から読み解く研究である。この目的を達成するため、24年度は調査に関わる作業を中心に、理論に関わる作業も並行して行った。 まず、前年度に共同研究(定量調査)において取得したデータを、本研究課題の目的において分析し直した結果、日本の自然科学研究者が、その共著者実践において、英米圏領域における主要な既存調査の結果に比しても顕著な混乱や困難を経験していることが明らかになった。既存の発表倫理研究は、バイオメディカル領域中心に進められていたが、本分析では、発表倫理をめぐる懸念が現場レベルで報告されながら十分な議論が行われてこなかった他の複数領域も射程に入れている点で、重要な意義をもつ。この分析結果を、International Sociological Association会議で報告し(筆頭・査読有)、関連研究者たちとのディスカッションを行うことができた。その結果、共著者実践における混乱を、グローバルな基準とローカルな研究スタイル・文化のせめぎあいとして読み解く議論へと、考察を深めることができた。 また、不正行為とハラスメントが交差する問題経験を有するコア・インフォーマントへの聞き取りを複数回行った。これにより、さらに調査を重ねる必要があるが、研究室での人間関係形成の背景となる、グローバル化した研究体制の詳細を読み解くための手がかりを得ることができた。 理論にかかわる作業としては、ポスト構造主義のジェンダー理論と経験的データの接合をテーマとした試論を、立教大学ライフストーリー研究会等において報告し、ライフストーリー法を専門とする研究者からのアドバイスを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際学会で報告し、専門研究者からペーパーに対するコメントを受けたことで、今年度の主要な目標については達成することができた。学会での議論を受けての再分析と理論部分の大幅な修正が必要となったため、論文発表までを完了することはできなかったが、来年度前半には英文論文として発表の予定である。また、理論検討についても、ライフストーリー法の専門研究者が集まる研究会での報告を行ったことで、今後のデータ分析に繋がる重要なアドバイスを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
24年度後半のインタビュー調査によって得られたデータからは、当初想定していた論点(共著者問題とデータ修正にかかわる問題経験)以外の問題点、特にグローバル化するチーム研究における「非伝統的学生」(特に非日本人、社会人)に関わる諸論点が浮き上がってきた。この点を受け、今後は当初のコア・インフォーマント・リスト(学生)を見直すとともに、北米圏で蓄積の厚い学生研究のレビューを行うなど、新たな論点に対応した修正を行う必要がある。 また理論面でも、高等教育をフィールドとするエスノグラフィー記述一般における位置づけを確認する必要が生じたため、自然科学系に限らず人文社会科学系についても、一部考察の対象として含めるよう計画を修正する。
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