本年度は、①25年度末に発表した単著書籍(24~25年度の成果の一部をまとめた和書)の内容を足掛かりに、特に理論レベル(ジェンダー理論と方法論)の再考、見直しを行う作業と、補足的なインタビュー調査を進めるとともに、②自然科学系の学際的プロジェクトにおけるフィールドワーク調査も行った。 まず、①については、前年度に和書で発表した内容の一部を、海外学会で発表した。特に方法論やジェンダー理論については、国内で受けた批判を踏まえて海外の関連研究者との議論につなげることができた。インタビュー調査については、対象者との連絡継続が難しくなり調査を休止せざるを得ない場面があった。だが、問いを発表倫理に関する一般的項目のみに限定した上で、分析を進めた。また、これまでの考察を関連する共同研究で得られたデータとあわせて検討し直すことで、英文論文(査読付き)として発表した。 ②については、自然科学系研究所および関連する研究室でのフィールドワークを行った。特に若手研究者に焦点を絞ったインタビュー調査を行い、異なる領域に所属する研究者間での学際的コミュニケーションにおいてギャップが生じるプロセスについて暫定的な仮説をまとめ、国内学会で報告した。学会報告では、仮説構築の背景となる理論枠組みの問題点などあらたな課題も指摘され、年度内の論文発表までは至らなかったものの、この成果をもとに今後議論を精緻化できる見通しである。 また、研究発表倫理一般に関する議論について雑誌『教育』への論文寄稿を行ったほか、関連学会やハラスメント被害救済団体等での講演などを通じて、研究成果をより広い領域へも伝えることができた。
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