研究実績の概要 |
タイヤや電池の導電材料として用いられているカーボンブラック(CB)は, 炭素ナノ微粒子であり, その形態が重要であるが, 形態の制御方法が確立されていないため, 形態はこれまで試行錯誤的に制御されていた. そこで申請者は実験および数値解析によってCBの形態制御法の確立を行った. そのためには, 各現象を練成したマルチスケール解析を行う必要があるが, 成解析により計算コストが著しく増大する. そのため, 高速解法アルゴリズムを開発し, 従来の解析時間より6分の1の計算コストで解析を行うことを可能とした. また, 詳細化学反応機構を考慮した反応動力学計算を実施することで, 化学種・粒子核のモル分率および粒径分布を算出する. その結果から, 粒子核の生成挙動が最も形態に影響を及ぼすことを明らかにし, 形態を複雑化させる条件について検討した. さらに, 実験によって形態制御において最も重要であると考えられている粒子核の生成モデルを構築した. ベンゼンに2-7環のPAHを添加した原料を熱分解し, 走査式モビリティーパーティクルサイザー(SMPS)を用いて粒径分布を測定することで, 多環芳香族炭化水素(PAH)からすすが生成する機構について検討した. その結果, ジグザグサイトを持ったPAHがPAH-addition cyclization (PAH-AC)によって大きなPAHへと瞬時に成長し, 二量化やクラスターを形成することですすが生成することを示した. さらに, エチレンおよびベンゼンの熱分解により生成されるすすを希釈し, さらに微分型電気移動度分析器(DMA)により分級し, 熱処理後の粒径変化を測定することで焼結が生じるかどうかを検討した. その結果, DMAにより分級したCBを再加熱することで, 焼結による粒径の減少が見られた. SEM像からも焼結の様子が確認できた. 以上より, すすの生成反応中に, 焼結が明らかに生じていることを示した.
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