研究課題/領域番号 |
12J05667
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
関沼 耕平 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 第1回十字軍 / トゥールーズ伯 / 教皇特使 / 中世史 |
研究概要 |
今年度は、第一回十字軍を、当時の南フランス情勢の文脈から再解釈し、その成果を、第4回西洋中世学会ポスター報告において、および第110回史学会大会において発表した。第4回西洋中世学会ポスター報告においては、「第一回十字軍における南仏聖俗諸侯―聖ヴィクトル修道院長Richardと1101年の十字軍によるトリポリ攻略」と題し、十字軍士達が、聖地においても出身地域というまとまりを保持し、その地域の修道院長がその強化のために宗教的儀礼を行っていたという問題提起を行うことができた。次いで、第110回史学会大会において、「第一回十字軍における南仏聖俗諸侯」と題して口頭発表を行った。本発表では、上記のRichardに研究の主眼を置いてはいるが、より多くの南仏諸侯を分析の要因とし、それらの関係に重きをおいた。特筆するべきは、トゥールーズ伯の南仏支配が流動的であったことを示す事実として、同地の副伯であったトランカヴェル家がトゥールーズ伯に対して離反的な態度をとった点を挙げた。諸侯間の関係に焦点を当てることで、地方において、十字軍がどのような「政治性」を有していたのかを示すことができた。 今年度の科学研究費補助金は、上記の研究を遂行するために、中世フランス史・中世スペイン史に関係する研究文献の収集に充てられた。本研究の主な研究対象であるトゥールーズ伯レイモン4世の影響下にあった南仏以外にも、ガスコーニュ地方やリムーザン地方、オーヴェルニュ地方の諸侯、そしてバルセロナ伯やアラゴン王といったスペイン諸侯にまで研究の対象を広げ、その全体像の把握を目指した。フランス中部のオーヴェルニュ地方についてはChr.Lauranson-Rosazの研究、ガスコーニュ・リムーザン地方の研究としてはF.Boutoulleの研究、スペイン情勢に関してはR.Fletcherの研究が挙げられる。南仏十字軍士の行軍過程を明らかにするために、トリポリ侵攻に関する史料や研究書を調査した。第一回十字軍研究は1099年のエルサレム占領と共に史料の記述が終わっており、その後の1101年の十字軍およびトゥールーズ伯が進めたトリポリ侵攻に関する研究は少なく、アラビア語史料を活用する必要があり、それに関係する文献の購入を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の研究においては、南フランスにおける十字軍運動の実態解明にとどまらず、スペインを含めた地中海世界の中に本研究を位置づけることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果をもとにして、投稿論文の執筆を進めている。その論文の質を向上させるため、今後、ブーシュ=デュ=ローヌ県立文書館エクス=アン=プロヴァンス・センターへの史料調査を予定している。この他に、これまでの研究で得られた第一回十字軍に関する研究動向を史学雑誌に投稿する予定である。
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