研究課題/領域番号 |
12J05691
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
若林 泰央 京都大学, 数理解析研究所, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 数論幾何学 / 代数幾何学 |
研究概要 |
当該年度は主にIdormant固有東及びそのモジュライスタックに関する研究」を行った。dormant固有東とは、双曲的代数曲線上の然るべき性質を満たす可積分主束であり、望月新一氏により創始されたp進Teichmuller理論において基本的な概念の一つである。dormant固有東及び普遍代数曲線上のdormant固有東のモジュライスタックの性質を詳らかにすることは、正標数の代数曲線を解析的に取り扱う為にも重要な研究課題である。具体的には、私は(目的別に)三つに大別される以下の研究成果を得た。一つ目は、dormant固有東に関するJoshi予想を解決したことである。与えられた代数曲線上にどれくらいdormant固有東が存在するのかは、非常に特別な場合が把握されているのみで、一般の場合は未解決のままであった。今回の研究で私は、K.Joshi氏により予想的に定式化されたdormant固有東の数え上げ明示公式を(若干修正したうえで)より強い完全な形に再定式化し証明した。二つ目は、一つ目の結果を応用し、ある種の有理凸多面体のクラスに対してそれらのEhrhart擬多項式を明示的に決定したことである。 この結果を用いて、Liu氏とOsserman氏によって定式化された予想を解決した。三つ目はシンプレクティック幾何、特に変形量子化に関するものである。具体的には、dormant固有東を用いて代数曲線の余接束上の標準的変形量子化を構成した。また、通常dormant曲線のモジュライスタックの余接束から普遍代数曲線上の固有東のモジュライスタックへの標準的な射はシンプレクティック同型であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
論文執筆の進行が少し遅れている。理由は、関連して見出された展開や結果が当初の予定を超え、論文に記載する内容が増えてしまったである。例えば、Ehrhart擬多項式に関するLiu氏とOsserman氏による予想が解決できたことは、当初は期待していなかったことである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今までの研究をさらに拡張するかたちで、(古典的な)量子的高次Teichmuller理論を正標数もしくはp進体上の代数幾何において確立することを目指す。具体的には、一般の簡約代数群Gに対する、dormant量子G-oper及び普遍代数曲線上のdormant量子G-operのモジュライスタックの大域解析を目的とする。またその応用として、これまでの研究で示してきた一連の結果(Joshi予想、組み合わせ論との関連性)の一般化を見出すことが今後の研究課題である。
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