研究課題/領域番号 |
12J05696
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
車地 崇 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | マルチフェロイクス / 電気磁気効果 / フラストレーション / スピン・軌道相互作用 |
研究概要 |
本年度は反転対称性の破れた結晶構造を持つ2種類の磁性体について研究を行った。具体的には[1]マルチフェロイック物質RFe3(BO3)4の電気磁気結合の解明、[2]新規マルチフェロイック物質M2Mo308の開発・電気磁気特性の評価である。 [1] RFe3(BO3)4(Rは希土類)は磁場下で電気分極が生じるなどの電気磁気応答を示すマルチフェロイクスであるが、電気分極に対するRとFeそれぞれの寄与は分かっていなかった。本研究では回転磁場中の電気分極を温度・磁場を変えながら測定し、その変化を詳細に調べた。磁性サイトの対称性・多重項の特徴に注目し、電気磁気結合の微視的モデルを構築した。それをもとに観測された電気磁気応答をRとFeそれぞれの寄与に分解することに成功し、R・Feそれぞれの電気磁気相関のより深い理解が得られた。本研究内容は論文としてまとめ、Physical Review B誌に投稿した。 [2] M2Mo308(Mは遷移金属)に関して、M=Fe, Co, Niの3種類の物質を合成し、磁性・誘電性を調べるとともに電気磁気相図の作成を行った。誘電測定によりFeとCoにおいて結晶の極性の方向と磁気誘起の電気分極の方向との関係が逆になっていることが示唆された。このことは軌道縮退・スピン軌道相互作用・結晶場の効果が絡み合っていることからくる非自明な結果であり、電気磁気結合のより深い理解に今後貢献していくと考えている。また強磁性マルチフェロイクス(Zn, Fe)2Mo308の開発にも成功し、ドメインウォール由来と考えられる新規の電気磁気応答を観測した。新規機能性マルチフェロイクスとして今後の研究に期待が持てる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前年度より研究しているRFe_3(BO_3)_4(Rは希土類)に関して電気磁気応答の起源を解明することに成功した。また新規マルチフェロイクスM_2Mo_3O_8(Mは遷移金属)に関しても、磁性と誘電性の強い相関および磁性ドメインの異常な電気磁気応答があることを確認している。
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今後の研究の推進方策 |
M_2Mo_3O_8 (M=Fe, Co, (Zn, Fe))の電気磁気相関の起源を明らかにしたい。そのためにはスピン軌道相互作用と結晶場との結合を理解することが重要で、X線回折実験によって磁気転移に伴う格子の変異の方向を調べることを考えている。またM=(Zn, Fe)の系において強磁性ドメインウォールが大きな電気分極を生じていることが示唆され、ナノスケールの磁気構造であるスカーミオンの形成の可能性を検討している。電子顕微鏡などの手法で磁気ドメイン・ドメインウォールを観測することを計画している。
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