研究課題/領域番号 |
12J05699
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
五十嵐 史彦 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 脱皮ホルモン / 前胸腺 / コレステロール / LpR / リポフォリン |
研究概要 |
本研究は、昆虫脱皮ホルモン生合成器官(前胸腺)においてコレステロール取り込みを担う分子の同定およびその機能解析を行うことを目的とした。 コレステロールは細胞外でリポフォリンと結合しているため、リポフォリンの受容体とされるLpRが取り込みに関わると考えられた。そこで、LpRの取り込み機能の有無を判定するための実験系の確立を行った。まず、LpRを内在性のリポフォリン取り込み活性の低い培養細胞(CHO細胞)に発現させ、リポフォリン由来コレステロール取り込みの有無を検証した。しかし、コレステロール取り込み増加は認められなかった。一方、リポフォリン由来の植物ステロールの取り込み増加は認められたことから、コレステロール増加が認められないのはCHOの内在性のコレステロールが多量であったためと考えられた。そこで、リポフォリンを安定同位体標識コレステロール(コレステロール-d7)でラベルし、そのリポフォリン(コレステロール-d7-Lp)を用いて再度同様の実験を行うこととした。通常、このようなラベルを行う際は、精製したリポタンパク質およびDMSOに溶解させたコレステロール-d7を37℃で混合する処理を行う。このため、同様の処理をリポフォリンについても行った。しかし、この条件ではタンパク質凝集が生じ、リポフォリンが失活してしまうことが分かった。そこで様々な条件検討を行い、結果として混合した後に4℃で静置する、という条件で変性の抑制に成功した。これによりコレステロール-d7-Lpの作成が可能となり、改めて取り込み実験を行ったところ、LpR発現画分でコレステロール-d7の取り込みが認められた。また、LpR発現細胞におけるリポフォリンの局在を調べたところ、LpRとリポフォリンのシグナルが共局在することが分かった。以上の結果から、LpRがリポフォリンを取り込むことでリポフォリン由来コレステロールを取り込む受容体であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一の目標であったLpRのコレステロール取込活性を解析するための培養細胞系の確立に成功したことが理由としてあげられる。特に、安定同位体標識コレステロール(コレステロール-d7)を用いることで、CHO細胞内在的に認められる高濃度のコレステロールの影響を受けない取り込み活性の評価系を構築できた。このことで、LpRの取り込み活性の定量的な評価や取り込みを阻害する化合物の探索が可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
LpRがコレステロール取り込み活性を示すことを明らかにしたが、実際の前胸腺でLpRがコレステロール取り込みの主要要因になっているかどうかは未だ不明瞭である。このため、LpRが前胸腺でリポフォリンと結合する主要な受容体かどうかを明らかにする必要がある。そのような課題を解決するために、LpRに対する抗体の作成を検討している。LpR抗体ができれば、免疫染色等により前胸腺コレステロール取り込み時におけるLpRの重要性を明らかにできる。
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