本研究は、現代日本における同種複数の祭礼の空間的広がりに注目し、それぞれの祭礼がどのような相互的影響関係にあるのか、また祭礼を支える「地域社会」が上記の影響関係のもとでいかに再編・再創造されるのかを社会学的に調査研究することを目的としている。 本年度は、大阪府岸和田市のだんじり祭に関する参与観察調査とインタビュー調査を継続するとともに、大阪府堺市などの周辺地域におけるだんじり祭についても調査を行った。また、比較調査の観点からネパール・カトマンズのマムラ・ジャトラ祭礼関係者に対してインタビュー調査を行った。 特に本年度においては、だんじり祭で曳行される山車の一種である地車そのものに注目し、祭礼組織内で地車を維持管理する技術がいかに伝承されていくのかに注目した調査を行うとともに、祭礼準備段階におけるさまざまな慣習的な手続きに焦点をあてることで、祭礼に関する「知」の伝達が祭礼組織の構造的特徴とどのように関連しているのかが明らかになった。また、祭礼に関する「知」の伝達プロセスがいかにして変容していくのか、あるいは変容しないのかについて、祭礼組織における担い手の動員メカニズムのもつ特徴と関連付けて考察した。その成果の一端は、文化人類学者によって国際的に組織される学会であるAnthropology of Japan in JapanのAutumn Meetingで報告した。 ネパール・カトマンズのマムラ・ジャトラ祭礼に関しては、文書資料が存在していないため、当該地域の古老にインタビュー調査を行い、祭礼の歴史的変遷について把握するとともに、「神話」を含めた祭礼に関する「知」の伝承が若い世代にどのように受容されているのかについて検討した。
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