本研究課題では、①蛍光指紋による生菌数推定手法の開発、②蛍光指紋による菌種の判別手法の開発、そして③ファイバープローブによる多検体検査システムの開発、の3点を目的としている。 研究実施計画において、二年目は、目的②を達成することに主眼を置いた。菌種判別手法の開発においては、各種細菌の平均的なスペクトルデータを参照蛍光指紋として定義し、判別アルゴリズムの中で使用する。参照蛍光指紋を定義するためには、異なる菌種の細菌から蛍光指紋スペクトルデータを測定できることが必要であり、そのための実験プロトコルを検討した。具体的には、食中毒に関連する代表的な5種類の細菌をモデル系として、培養方法・細胞洗浄・測定用の懸濁液の調製などの一連の操作について妥当な方法を探り、分光蛍光光度計の測定パラメータの調整を行い、明確な蛍光指紋データを測定できる手法を見出した。また、判別アルゴリズムを作成する上で、そもそも各種細菌の自家蛍光指紋にはその種類を判別しうる情報が含まれているのかどうか? の点について、検証を行った。上記の細菌群の蛍光指紋スペクトルデータに対して主成分分析を行うことにより、特定の波長条件において、菌種の違いを判別しうる情報が含まれていることが示された。 三年目に実施予定であった目的③について、多検体計測システムのプロトタイプを構築した。具体的には、分光蛍光光度計・ファイバープローブ・XY自動ステージ・インキュベーターを組み合わせ、それらの装置を連動させて制御するプログラムを作成した。本システムにより、4~60℃の範囲で試料温度を保ちっっ、縦横150mmのXY走査範囲で蛍光指紋の多点計測を自動化し、測定における省力化および時間短縮が可能となった。
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