研究課題/領域番号 |
12J05744
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
武村 俊介 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 高周波数地震動 / 盆地堆積層 / 関東平野 / 地震波散乱 / やや長周期地震動 / コーダ波 / 半理論手法 / 地震学基盤 |
研究概要 |
本研究は関東平野を対象として、地殻・マントルから浅い盆地堆積層内までの1Hz以上の高周波数を含む広帯域地震動の伝播特性を解明し、それを説明できるような不均質構造モデルの提案を目的とする。これまで、わかっていなかった盆地堆積層内での短波長不均質構造モデルの推定、それにともなう地殻・マントル内の短波長不均質構造モデルの高精度化を行い、首都圏直下の地下構造モデルの精度を格段に改善させる。 上記研究目的のために、今年度は盆地堆積層内の不均質構造推定を行った。関東平野内で得られる地震の波形記録のCoda波(S波の後に続く震動)記録と半理論的に合成されるCoda波を比較し、堆積層内における散乱係数(散乱の強さ)と非弾性減衰(地震波の減衰の強さ)の推定を行った。その結果、地殻・マントルに比べ、柔らかく伝播速度の遅い堆積層では散乱係数と非弾性減衰が強いことを明らかにした。また、Coda波解析の過程で、平野内の直達S波にも不均質構造推定の鍵となる特徴を見出した。 観測される高周波数地震動を含む広帯域(0.05-4Hz)地震波形の再現には、短波長不均質構造だけでなく、長波長の不均質構造も正確である必要がある。そのため、現在提案されている地震基盤モデルを用いて地震動シミュレーションを行い、観測波形と比較を行った。やや長周期地震動(0.125-O.5Hz)を用いて比較をした結果、関東平野周辺では波形の再現性が高かったにも関わらず、関東平野内部(盆地内)に入った途端に再現性が悪くなることがわかった。盆地の端では、従来行われてきたような解析手法では盆地中心部に比べ精度が低くなるため、新たなモデル構築手法を提案する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Coda波を用いた盆地堆積層内の散乱・減衰構造の推定を行い、その結果をまとめ学会発表を行う過程で、Coda波だけでなく直達S波についても、平野内で特徴があることを発見し検討を行った。 また、長波長の不均質構造(地震学基盤構造)についても、既往の構造モデルの問題点を洗い出すことに成功し、構造改善のためのヒントを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、昨年度推定された盆地堆積層内の散乱・減衰構造の結果をまとめ英語雑誌への投稿を目指す。その過程で、文献調査や地質などの他の情報との比較を入念に行う。また、千葉県中部から南部にかけて特徴的な形状のS波が観測されているので、関東平野下の地下構造モデルの高精度化のために原因をつきとめ、不均質構造モデルの提案を行う。 関東平野周縁部の地震基盤構造モデル改善のため、平野端でのやや長周期地震動の励起に着目し、数値シミュレーションと観測の比較から、構造モデルの構築を行う。
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