研究課題/領域番号 |
12J05772
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
天羽 隆史 立命館大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 確率解析学 / Malliavin解析 / 有限次元Mallaivin解析 / Heisenbergの交換関係 / Maruyama-Girsanov公式 / Clark-Ocone公式 / 確率微分方程式のゲージ理論 |
研究概要 |
本研究の大目的は、確率過程のゲージ理論を完成させることであったが、その目標のために研究してきたことについて以下に記述する。 Levy過程に対する変数変換公式の研究については、Brown運動の場合にLie環のレベルでその変数変換公式を説明することにはそもそも成功していた。現在はPoisson過程の場合に同様のことを研究している最中であるが、Poisson過程から自然に定義される差分作用素のL^(2)-随伴作用素を指数の肩に乗せたものを真空状態に当てたものがやはりPoisson過程に対するGirsanovの定理に現れるGirsanov densityを与えることがわかった。これによってやはりPoisson過程に対するGirsanov公式も、Brown運動の場合と同様にHeisenberg代数の作用で記述することができる可能性が強くなった。 離散化したClark-Ocone公式についても以前の研究によりBrown運動の場合には得られていたが、今回の研究によってPoissonの場合にも(数列空間上の)差分作用素を定義し、そのPoisson分布に関する$\ell^{2}$-随伴作用素がHeisenbergの交換関係を満たすことが確かめられ、やはりそのHeisenberg代数の表現に基づくフレームワークによってPoissonに関する離散Clark-Ocone公式を示すことができた。Heisenbergの交換関係そのものは通常のMalliavin解析においてよく知られているものであるが、その構造を崩さずにWlener-Poisson空間上で展開されるMalliavin解析を有限次元Euclid空間上の有限次元版(もしくは離散版)のMalliavin解析のフレームワークに翻訳できたことには意味がある。これはSDEのGauge変換やGalois群を有限次元的なレベルから考察出来得るという一つの示唆であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Heisenberg代数の表現がPoissonに関するGirsanov公式を説明するということにも、あと少しのところまで到達し、Malliavin解析とも一貫性のある有限次元的近似による方法を道具として研究をすることによって、そこでさまざまな(特に最終的な目標である確率微分方程式のゲージ理論に対する)見地を得ることが出来たからである。
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今後の研究の推進方策 |
Heisenberg代数の表現がPoissonに関するGirsanov公式へのアプローチに関する残った問題は、差分作用素を指数の肩に乗せたLie group elementが関数のどのような変換を導くか、ということにあるので、これから研究していく必要がある。 さらに確率微分方程式のゲージ理論に向けて、SDEのGalois変換という概念を定義することを最初に到達するべき目標とせねばならない。一意的強解の許されないSDEを十分に考察し、まずはその具体的な幾つかの例において解の変換群を考察していくつもりである。
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