研究課題/領域番号 |
12J05783
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
白根 篤史 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | CMOS / MEMS / パワーアンプ / 可変インダクタ / 昇圧回路 / 変調回路 / 広帯域 |
研究概要 |
本研究の目的は、CMOSプロセスとMEMSプロセスの融合という異種機能集積による、広帯域無線送信回路の実現である。一年目の実施計画として、送信回路を構成する要素回路の詳細な仕様の策定、その仕様を満たす要素回路技術の検討の二点を掲げていた。1年目である平成24年度は、この計画に従い、上記二点に集中して研究に取り組んだ。提案する送信回路は以下の四つの要素回路で構成される。 1.広帯域パワーアンプ 2.チューナブル整合回路 3.MEMS制御回路 4.広帯域変調回路 広帯域パワーアンプについては、出力電力30dBm、動作周波数帯域0.8-6.0GHzを目指し、設計、試作評価を行った。試作評価結果より、パワーアンプの出力インピーダンスを50Ωとしたとき、22dBmの出力電力を確認した。この結果より、さらに出力インピーダンスを下げ、チューナブル整合回路と集積化することにより30dBmの出力電力及び、目標とする広帯域動作の実現の見通しを得た。チューナブル整合回路においては、MEMSプロセスを用いて可変インダクタの設計、試作評価を行った。新たなインダクタ形状を提案することで、0.8-6.0GHzで必要となるインダクタンスの可変量0.4-3.0nHに対して、1.0-3.3nHというほぼ仕様を満たす試作結果を得ることができた。チューナブル制御回路を駆動するためのMEMS制御回路では、数ボルト程度の低い電圧から、20V以上の高電圧を生成する必要があるが、制御回路を構成するMOSFFTのN-well及びP-Wellのバイアス電圧をバランスよく設定することで3.3Vの電源電圧から26Vの高電圧を作り出すことに成功した。広帯域変調回路では、0.8から6.0GHzにわたって、高い変調精度が求められる。提案する変調回路では、線形性補償回路を新たに導入することで、変調精度の劣化を防ぎ、0.8-6.0GHzにおいて、QPSK変調でEVM3%以下という広帯域動作かつ高精度な変調の実現を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に従い、ほぼ計画通りに研究を進めてきた。研究実施計画の一年目では大きく二点の到達目標があり、一点目は詳細な仕様の策定、二点目は仕様を満たす要素回路の開発である。その二点ともおおよそ満たすような研究結果が得られており、一年目の進捗としてはおおむね順調だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
一年目が終わり、研究実施計画通り順調に進捗しているため、今後二年目も計画に基づき研究を進めていく。具体的には、一年目に検討した要素回路を組み合わせ、部分的に集積化していく。その際に、集積化により発生する問題点を予測し、パッケージ方法や最適なレイアウトにより対策を立てる。そして実際に要素回路を組み合わせたものを評価し、有効性の確認、また予測できない問題の抽出を行う。
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