研究課題
異種機能集積技術を用いて、無線送信回路の広帯域化すなわち、高機能化を追求する研究を行ってきた。無線送信回路の評価指標として、広帯域特性のみならず、低消費電力特性は、近年のモバイル端末やセンサ端末に向けた無線通信回路には必須の特性である。第2年目にあたる本年度は、特に無線送信回路の低消費電力化に注目して、研究を遂行してきた。送信回路の低消費電力特性を実現するために、二つのアプローチを採用した。1. パワーアンプの出力電力の最適化2. 周波数シンセサイザ不要の送信回路アーキテクチャ一つ目のパワーアンプの出力電力は、所望の通信距離等によって決まるため、不必要に大きくするのではなく、所望の距離を満たす程度の出力電力に設定し、パワーアンプにおける消費電力を削減することができる。二つ目の周波数シンセサイザの消費電力は、パワーアンプの出力電力を下げ、パワーアンプの消費電力の全体に対する割合が下がってきた際にボトルネックとなる消費電力である。提案するアプローチでは、従来周波数シンセサイザが生成していた無線通信における中心周波数のキャリア信号を、親機側(RFID)システムにおけるリーダーデバイスや、無線LANにおけるルーターデバイス)から送られてくる所望周波数の1-tone信号で代替することで、低消費電力化を促進する。以上の二つのアプローチを実際に適用した無線送信回路を設計しSi CMOS 65nmプロセスを用いて試作し、測定評価を行った。測定評価結果において、250-μWと現在の製品化されている無線通信回路に比べて二桁程度低い消費電力特性を得ることができた。またその時、BPSK変調において1.8%のEVM、16-QAM変調においても4.9%と非常に良好な送信回路の変調特性を実現していることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
前年度からのペースを保ちながら、着実に研究を前に進めていった。無線送信回路の広帯域化、高機能化を実現すべく、周波数シンセサイザ不要のアーキテクチャを採用するという大胆なアプローチを提案し、それを実際に設計して、試作を通して実現した。またその測定評価の結果も一定の性能を得られている。以上のことを踏まえて、最終年度に向けて計画は順調に進展している。
無線送信回路の高機能化を進めてきた2年間を踏まえて、最終年度において以下の二点に注力して研究を進めていく。1. 異種機能集積化をさらに推し進め、さらなる無線送信回路の高機能化を実現するために、送信回路の電力を効率的に供給する電源管理回路の実現、及び送信だけでなく受信回路も含む無線トランシーバの実現2. 以上の研究をまとめ, 博士論文の執筆
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Japanese Journal of Applied Physics
巻: vol. 53(ISSN0021-4922) ページ: 04EE13-1-8