研究課題/領域番号 |
12J05841
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
河田 恵子 東北大学, 大学院歯学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 分化誘導 / 転写調節系の分子解剖 / TALエフェクター |
研究概要 |
平成25年度における研究成果 本申請課題では、造血幹細胞および造血前駆細胞の同一性と運命を決定づける転写制御の分子機構を明らかにするために、TAL (Transcription activator-like : Tal)エフェクターを用いた解析法の開発に取り組んだ。この技術は最も簡便で成功率が高いばかりでなく、多くの生物や細胞種に応用可能な標的ゲノム編集技術である。標的細胞としてヒト血液細胞株K562、マウス血液細胞株416BとマウスES細胞株Ainv18を用いた。単純ヘルペスウイルス由来タンパク質16 (VP16)に由来する最小の転写活性化ドメインまたはクリュッペル付随ボックスをもつZinc fingerタンパク質(KRAB)と融合させることで、非常に初期の造血細胞分化に関与するScl/Tal1またはPU. 1を標的とした転写エンハンサーを作製した。まずこれらをSclの転写開始点上流40kbまたはPU. 1の転写開始点下流14kbにTALエフェクター転写調節因子を用いて組み込むことで、Scl/Tal1およびPU. 1と、さらに隣接する遺伝子であるMAP17とScl39a13の発現誘導の検討を行つた。次に、造血転写因子ネットワークと細胞の運命決定について、特定TALエフェクター標的遺伝子を用いた集積流体回路技術(lntegrated Fluidic Circuit : IFC ; BioMarkシステム)を応用することで、単一細胞から定量的RT-PCR解析を行い、造血細胞の特性を規定する遺伝子群および転写因子の同定を試みた。遺伝子発現解析の結果から発現にばらつきのある遺伝子群を同定し、各々特定のTALIエフェクター標的遺伝子を持つ細胞を用いたクラスタリング解析を行い、細胞の種類による亜集団の分類や各集団に属する細胞の割合を調べた。以上の結果から、PU. 1転写開始点下流14kbのTALIエフェクター標的遺伝子がPU. 1の発現を調節するばかりでなく、確立された細胞株よりも単一細胞レベルでES細胞から分化誘導した造血細胞集団にきわめて強力な分子制御作用を与えることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本申請課題より、造血幹細胞および造血前駆細胞における種々の現象の分子機構に存在する統合制御メカニズムを明らかにすることを目指しました。この研究成果については、すでに国際高血圧学会(ISEH)で発表を行っており、すでに専門国際学術誌に投稿している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本研究によって造血細胞の分化誘導への関与が明らかとなったPU. 1-14kbまたはScl+40kb TALエフェクター転写調節因子の遺伝子発現パターンにつき比較解析することで、細胞ステージに特異的エンハンサーを標的とすることで、より正確な発生制御に関する情報を提供するととができる可能性が考えられ、造血幹細胞および造血前駆細胞(haematopoietic stem and progenitor cell : HSPC)における種々の現象の分子機構の解明のための新しい足がかりが構築されたと考えられる。今後、これらの特異的エンハンサー領域内に複数の遺伝子の発現を確認する必要があり、定量的RT-PCR法を用いて隣接な遺伝子また非標的遺伝子の過剰発現を指標として造血幹細胞、前駆細胞および成熟細胞の性質の解析を行なう予定である。さらに、TALエフェクター転写調節因子の活性化ドメインの結合能力を確認するため、ヒトまたはマウス細胞株を使用し、TALE-VP64のゲノムワイドにエピゲノム情報を取得するクロマチン免疫沈降法(Chip-seq)を行なう。また、単一細胞発現プロファイリングから遺伝子発現を網羅的に解析し、転写因子間ネットワークのモデルを構築する。さらに、決定的な造血部位で機能制御性を持つPU. 1-14kbであること主張を強化するため、PU. 1-14kbとPU. 1-18kb過渡外来遺伝子導入マウス胚のイメージングおよび定量的解析を行なう。
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