研究課題
ESTファミリー転写因子PU.1は主に骨髄球系前駆細胞に発現し、成人型造血における細胞の運命選択に重要な役割を果たす。しかし、PU.1遺伝子の発現が転写因子ネットワーク内でどのように同細胞の分化を制御しているのか、そのメカニズムは十分に解明されていない。本研究の目的は、転写因子PU.1を中心とするゲノムワイド転写因子マップを作成することで、そのため標的ゲノム編集技術であるTALEを用いてPU.1のエンハンサーの修飾を試みた。この修飾によりPU.1遺伝子の発現レベルを変化させることで生じる転写因子ネットワークの変化を単一細胞レベルで解析することとした。本研究においては、まず造血幹細胞および造血前駆細胞の運命を決定づける転写制御の分子機構を明らかにするのに必要なTALEを用いた解析法の開発に取り組んだ。ES細胞のPU.1の転写開始点下流14kbに存在するエンハンサーにTALEを用いて転写活性化ドメインVP64あるいは転写抑制ドメインKRABをコードするDNAを導入し、 EB(EB: 胚様体)を形成させた。導入したDNAにはドキシサイクリン標識を行い、PU.1およびそれに隣接した遺伝子群の発現に及ぼす影響と造血細胞分化へ及ぼす効果を解析した。その結果、TALEを用いた標的ゲノム編集と単一細胞レベルでの遺伝子発現プロファイリングを組み合わせた方法が、遺伝子レベルでの細胞分化調節ネットワークの解析に有用であることが明らかとなった。本研究で実施したTALEを用いたPU.1-14kbの活性化によって細胞表面抗原の発現量は変化し、造形細胞への運命決定が促進されることが示された。すなわち、単一細胞遺伝子発現解析の結果、PU.1-14kbの活性化は同細胞内の転写因子ネットワークが内皮系から造血系へと推移させた。本研究はPU.1-14kbの造血細胞分化に果たす重要性を明らかにしたばかりでなく、遺伝子ネットワーク解析におけるTALEを用いた標的ゲノム編集の有用性を示した。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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巻: 141 ページ: 4018-30
10.1242/dev.115709