研究課題/領域番号 |
12J05861
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
辰巳 晋一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | 階層ベイズモデル / 樹木更新 / 樹木成長 / ササ / 針広混交林 / 単木択伐 / 北海道 |
研究概要 |
北海道の針広混交林では、単木択伐(抜き伐り)後にササが繁茂し、次世代の更新木が減少してしまうケースが散見られる。本研究ではその生態メカニズムの一端を、「成木-ササ-更新木」の三者関係を個体レベルで統計モデリングすることで明らかにした。解析の結果、針葉樹の中径木が、ササ密度に対して高い抑制効果を持つことが分かった。この原因として以下の二点が考えられた。「1.大径木は枝下高が高くなりすぎるため、また広葉樹は落葉するため、被陰効果が弱く、ササが濃くなる」。「2.ササは冬期に積雪表面から出ると(外気に直接さらされると)と枯れてしまう。冬期にも樹冠を維持する針葉樹、とくに枝下高が低い中径木は、樹冠下における積雪量が少なくなるため、このことがササの抑制につながった」。ササの抑制を通'じた針葉樹中径木から樹木更新への間接促進効果(Indirect facilitation)の推定値は、被陰による直接効果をはるかに上回った。また、ササから更新木への負の影響は、特に針葉樹更新木に対して大きいことが分かった。針葉樹中径木の減少がササを増加させ、そのササの増加がさらに針葉樹の減少を加速度的に促進する(Positive feedback)という可能性が示唆された。この成果は国内学会においてポスター発表を行い、現在国際学術誌に論文を投稿中である。 また、同森林における樹木の成長量についても解析を行った。最尤推定法などによる過去のモデリングでは、サンプル数の少ない樹種は解析から外されてきた。本研究ではベイジアン統計を使って「樹種」をカテゴリカル変数としてモデルに組み込むことで、マイナー種を含む多種が成長量に与える影響を推定した。この成果は国際学術誌に論文として発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、以下の4つのサブテーマによって構成される:1-樹木更新のモデリング、2-樹木成長のモデリング、3-樹木死亡のモデリング、4-森林全体の動態シミュレーション。
|
今後の研究の推進方策 |
研究期間の前半で、1と2が終了したため、おおむね順調に進展しているといえる。 研究機関の後半では、樹木死亡のモデリング、および森林全体の動態シミュレーションを実施する。
|