研究課題/領域番号 |
12J05906
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
木村 大翼 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 機械学習 / 簡潔データ構造 / カーネル法 |
研究概要 |
本研究の目的は省メモリでかつ高速な操作を可能とする簡潔データ構造と機械学習を融合させ、大規模かつ高速な機械学習手法を構築することである。これについて昨年度の研究成果は主に以下の二つである。まず一つ目は機械学習分野におけるものであり、木カーネルの高速な計算アルゴリズムを構築したことである。木カーネルとは木構造間の類似度を計算することによって学習を行うという枠組みである。従来の木カーネルは計算に時間がかかり、大規模な木構造に対して用いることが困難であった。新たに構築した手法では予測精度を保ちつつ、計算時間が木構造の大きさについて線形時間で計算することができる。これによって大規模な木構造に対しても木カーネルが適用可能となった。この成果は機械学習で最も権威のある国際学会の一つであるICMLに論文が受理され、発表を行った。二つ目は簡潔データ構造と機械学習両分野にまたがるものである。機械学習の学習アルゴリズムに、木構造に対する簡潔データ構造を組み込むことによって高速かつ省メモリである計算手法を新たに提案した。この提案手法によって従来はデータ数の二乗の計算量が必要であった学習が、データ数について線形時間の計算量で可能となった。この手法によって大規模なデータからも学習を行うことが可能となり、近年大きな注目を集めているビッグデータの観点からも意義のある成果だと考えられる。この成果を日本最大の機械学習学会である情報論的学習理論ワークショップで発表し、両分野の融合を促した。これら二つの研究成果および発表は研究実施計画に記載していたものであり、昨年度の研究は当初の計画通りに進行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度おける研究は、ほぼ研究実施計画どおりに進めることができた。まず前半では機械学習の最も権威のある国際学会の一つであるICMLに論文が受理され研究発表を行った。さらに後半では研究目的である簡潔データ構造と機械学習を融合させた研究を行い、IBIS2012で発表を行った。また簡潔データ構造の世界的な第一人者であるレスター大学のRajeev Raman教授、ピサ大学のRoberto Grossi教授、国立情報学研究所の定兼邦彦准教授などとディスカッションを行った。以上から研究はおおむね順調に進展していると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度における研究は当初の計画通り進める予定である。まず昨年度の後半の研究をさらに発展させたものを機械学習の国際会議であるNIPSに投稿し、発表を行う。ここで機械学習分野に簡潔データ構造を強くアピールし、両分野の交流を促す。さらにRajeev Raman教授らとのディスカッションを昨年度と同様継続していく予定である。
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