研究課題/領域番号 |
12J05908
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宇治 広隆 京都大学, 工学研究科, (DC1)特別研究員
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キーワード | ヘリックスペプチド / 単一分子測定 / 電子移動 / ダイポールモーメント / ポルフィリン / 光電流発生 |
研究概要 |
当該年度に実施した研究においては、ヘリックスペプチドの電子移動能を種々の方法で解明することを試みた。 まず、昨年度の実施した研究を発展させるために、鎖長の異なるヘリックスペプチドの合成を行った。今後、STMブレークジャンクション法による単一分子測定を行う予定である。また、Gaussian O3プログラムを用いた、b31yp/6-31G+(d, p)レベルでの密度凡関数法による第一原理計算を並行して行っている。 更に、ヘリックスペプチドの電子移動を分子エレクトロニクス素子へと発展させるため、光エネルギーアクセプターを末端に結合したヘリックスペプチドを用いて、金基板上に自己組織化単分子膜(self-assembled monolayer : SAM)を調製し、光励起による光電流発生について検討を行った。 光応答を示す分子としてN末端にジスルフィド基、C末端にテトラフェニルポルフィリンを結合した、L一アラニン(L-alanine : Ala)と2-アミノイソ酪酸(2-aminoisobutyric acid : Aib)の交互配列16量体ヘリックスペプチド : SSA16TPPと、表面密度を調製するためにN末端にジスルフィド基、C末端にメチルエステル保護基を有する16量体ヘリックスペプチド : SSA160Meを設計した。 ポルフィリンの表面密度を変化させたSSAI6TPPSAMの光電流の電場依存性について測定した結果、全てのサンプルで作用電極を正に印加するに従って、カソード電流からアノード電流へと光電流が電位依存性を示した。また、ポルフィリンの表面密度と光電流がOnAとなる電位(VOとおく)の間に相関関係があることが分かった。具体的には、ポルフィリンの表面密度が小さくなる(モル比で1、0.5、0.33)と、VOが正側(-253mV、-207mV、-154mV)にシフトしている。アクションスペクトル測定からSSA16TPPのみでは、J会合体に見られる吸収スペクトルの長波長シフトが見られたことから、ポルフィリン同士は会合していると考えられる。表面密度を変化させることにより、会合状態が変化してVOが変化すると考え、更に詳細な測定を継続して行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は、昨年度の研究をより発展させるため、着実に合成を重ねて研究を進展させている。また、ヘリックスペプチドの持っ高い電子移動能を単一分子レベルで解明し、機能性タンパク質複合体を模倣とした新規分子デバイスに必要な基礎的知見を明らかにするという当初の目的だけでなく、より応用的な研究を新規に計画し、種々の新たな測定法を習得し研究を遂行してきたことから、一定の進展が見られたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
申請者は、所期の目的を達成するために、現在継続して研究を行っている。さらに、異なる分子システムにおける電子移動反応についても明らかにする予定である。
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