研究課題/領域番号 |
12J05912
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石田 智子 九州大学, 比較社会文化研究院, 特別研究員PD
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キーワード | 土器 / 物質文化 / 胎土分析 / 産地同定 / 弥生時代 / 日韓交流 / 考古学 / 地球科学 |
研究概要 |
本研究の目的は、地球科学的高精度分析手法による胎土分析を活用して、先史社会における土器を中心とする物流ネットワークの実態を踏まえた重層的な地域構造を解明することである。 平成25年度は、XRFおよびLA-ICP-MSによる土器胎土の元素組成データの解析に加え、考古学的研究成果との統合を重視した。また、弥生時代の粘土採掘坑や、古墳時代の須恵器製作址における貯蔵粘土のサンプリングを実施するなど、胎土分析用の土器資料や粘土試料の収集を継続して実施した。製品としての土器と原材料の関係について検討した結果、基本的には居住地周辺で採取可能な粘土を元にして、各生産単位で砂粒の添加等の人為的調整を行うことで、土器の元素組成に差異が生じる見通しを得た。また、弥生時代中期後半期における近隣集落間および遠隔地域間の土器移動現象に加え、さらに土器の型式学的特徴を詳細に検討することで、同一遺跡内の居住集団関係や土器生産体制を把握することが可能となった。これは、胎土分析が多様な空間スケールにおける土器動態を検討する上で有効な手段であることを示す重要な成果である。 なお、佐賀県教育委員会・福岡市教育委員会・糸島市教育委員会等での資料調査を通じて、北部九州地域の弥生時代前期末~中期前半に特徴的な動態を示す黒彩土器の成立と展開を明らかにし、査読論文にまとめた。これは、中期前半期の有明海沿岸地域および玄界灘沿岸地域の地域構造を解明する際の基礎データとなる。 研究成果は、学会での口頭発表・ポスター発表で報告し、考古学や文化財科学を中心とする関連分野の研究者との議論を通じて、分析方法やデータ解析・表示方法、説明方法などの洗練化を図った。 以上の成果として、博士学位論文『土器動態からみた弥生時代地域社会構造の研究』を提出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
博士学位論文の執筆に伴い、地球科学的分析手法による胎土分析成果と考古学的研究成果との統合を優先したことで、現時点での到達点や問題点を明確に把握できた。当初の予定であった土器の構成鉱物に焦点をあてた分析の実施が遅れているが、改善した方法に基づく分析を次年度速やかに遂行可能である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果に伴い、当初の予測以上に、同一遺跡内の居住集団関係から遠隔地域間関係におよぶ多様な空間スケールの分析が可能である見通しを得た。そのため、発掘調査密度の高い福岡平野等に焦点を絞って、追加の土器資料を収集する必要が生じた。また、偏光顕微鏡観察やXRF・XRD・EPMA・LA-ICP-MS等の機器測定に基づく鉱物分析を複合的に実施し、これまで明らかにしてきた土器胎土の元素挙動の由来を検討する予定である。
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