研究課題/領域番号 |
12J05915
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
萬屋 博喜 関西学院大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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キーワード | ヒューム / イギリス経験論 / 因果性 / 確率 / 意志の弱さ / 帰納法 / 信頼性主義 / 性格特性 |
研究概要 |
今年度は、前年度に引き続き18世紀のスコットランドの哲学者デイヴィッド・ヒュームの哲学を「確率概念を媒介した行為論」として合理的に再構成しつつ、現代的に展開するための研究を行い、その成果を口頭や論文の形で発表した。また、2013年9月から2014年3月にかけて、英国オックスフォード大学哲学科に客員研究員として、半年間にわたる海外滞在研究を行った。 (1)ヒューム哲学の合理的再構成についての研究 : 昨年に提出した博士学位論文(「因果と自然――ヒューム因果論の構造――」)に含まれる論点や議論を発展させ、個別の論文として成果を示した。特に、博士学位論文の第一章で展開した議論を発展させ、(a)帰納法と確率に関するヒュームの議論が信頼性主義的であるだけでなく、(b)科学的探究が科学者の性格特性(誠実さや注意深さ)と切り離せないという独自の視点を提供することを明らかにした。こうした研究の成果は、ヒューム哲学が基本的に人間の行為・実践の観点から科学の基盤を捉え直すという博士学位論文で得られた知見を積極的に後押しするものである。 (2)現代行為論と統計科学理論についての研究 : 英国オックスフォード大学での資料調査、授業や研究会への出席、現地での受入教官(Dr Peter Kail)との面談などを通じて、現代の英米圏における現代行為論や統計科学理論の現状について多くの知見を得た。海外滞在期間中には、合理的に再構成したヒューム哲学を現代的に展開する試みとして、とりわけ現代行為論における重要問題の一つである「意志の弱さ」に関する研究を集中的に行った。「意志の弱さ」という主題は、自由・責任・合理性という重要概念が交差する地点に属しており、その意味で「確率概念を媒介した行為論」の構築を目指す上でも取り組まれねばならないものである。この主題は、現代行為論のみならず統計科学理論においても喫緊の課題とみなされており、今度の研究を進める上できわめて重要なものであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的で提示した課題のうち、(2-1)行為の責任に関する現代行為論研究については、「非両立説と行為者因果」という論文で成果をまとめ、(2-2)行為の合理性に関する統計科学理論研究については、英国オックスフォード大学で多くの研究者との交流によって知見を深めることで, 最終年度での「確率概念を媒介した行為論」を構築するための準備を整えることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の三年目においては、「確率概念を媒介した行為論」の構築に向けたこれまでの研究成果を、国内・国際雑誌に発表することを試みる。特に、二年目で得られた知見については、口頭発表やサーベイ論文などの形で公表することで、情報提供を行う予定である。
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