研究課題
前年度までにマウスを用いて行った基礎的研究から、炎症状態、定常状態ともヘルパーT細胞(Th1, Th17細胞)および、Innate lymphoid ce11 (ILC)は独立した制御機構が存在することが示唆された。今年度はヒト腸管内におけるILC、特にILC1/ILC3について、炎症性腸疾患(IBD)患者のヒト腸管切除検体を用いて検討した。まず、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)患者の腸管切除検体より粘膜固有層単核球を分離し、Lineage marker (-) CD45(+)分画をCD56・CD127の発現の有無によってILCを分類した。CD127(+)CD56(-)細胞の存在比率は、各患者群で有意差を認めなかった。次に、各分画からのIFN-γ産生を検討したところ、予想に反して、ILCからのIFNγ産生細胞の比率は炎症部よりむしろ非炎症部で顕著であった。一方で、粘膜修復能に関与するIL-22産生能を検討したところ、CD127(+)CD56(-)分画(CD127SP)およびCD127(+)CD56(+)分画(DP)においてIL-22の産生細胞が認められ、IL-22産生もCD127SPおよびDP分画において他の分画より高値であった。次にCD127SPおよびDP分画を単離し定量PCRを実施したところ、Flowcytometryの結果と一致してCD127SPおよびDP分画はRORγt陽性であり、これらはILC3, NCR+ILC3に一致する分画と考えられる。さらに、ILCからのIL-22産生能を炎症部と非炎症部において比較したところ、非炎症部において炎症部より優位に高値を示した。以上の検討からCD患者腸管内ILCはIL-22を好産生し、IL-22の産生能は炎症部で産生が低下していることから、炎症により粘膜修復機構の一つであるIL-22産生が破綻している可能性が示唆された。今後ILCを制御する新規メカニズムを検討する事で、IBD治療において近年最重要視されている「粘膜治癒」の達成に向けて、ILCを標的とした全く新しい治療法の基盤的研究を目指したい。
2: おおむね順調に進展している
CD, UCの患者検体を用いてヒト腸管ILC精力的に検討し、ヒト腸管におけるILCの機能解析を推進した。
今年度得られたIBD罹患部と非罹患部におけるヒト腸管内ILCのサイトカイン産生能の差を生じるメカニズムについて、ヒト腸管切除検体を用いて、引き続き詳細に検討を行っていくことで、ヒト腸管内ILCの制御メカニズムの解明と、ILCの機能修飾薬の候補となる基盤的研究を推進する。
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