本年度は、本研究課題の研究期間の最終年度であることから、これまでの作業を継続するとともに、総括的な作業を進めてきた。まず、昨年度に引き続き、英国の出生前診断の当事者支援団体の資料で現在入手可能なものを探し、できるかぎり入手した。また、これまで英国ロンドンに事務所を構える出生前診断の当事者支援団体ARC(Antenatal Results & Choices)でのフィールドワークやインタビュー調査を実施し、事務所での参与観察等を行ってきた。このことから、これまでの調査結果を整理するとともに、日英の出生前診断をめぐる「当事者支援」の比較検証を行った。とりわけ、2012年9月以降、「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査」(NIPT:non-invasive pretanal test)の導入が大きな論議となり、2013年4月から各地の医療機関でその実施が開始されたことは、本研究課題の研究計画当初では、まったく予想していなかったことである。そのため、これまで日本ダウン症協会の理事長を招いての講演やインタビュー調査などを実施してきたが、そのとりまとめをあらためて行い、今日、新たな問題となっている論点等を整理した。そして、これらの動きに対応して、本研究課題の研究成果を日本の当事者団体に向けて発信・提供するなど、アウトリーチ活動も継続的に実施し、また学術雑誌および国際会議等での成果報告を行ってきた。
|