研究課題/領域番号 |
12J05932
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
根岸 淳 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 脱細胞化 / 小口径血管 / 組織工学 / 高静水圧法 |
研究概要 |
小口径血管グラフト作製を目的とし、ブタ動脈脱細胞化処理とその評価を行った。本年度は、移植対象となる冠動脈に組織学的構造が類似しているブタ動脈を使用した脱細胞化血管の開発検討を行った。小口径血管グラフトとして、必要とされる長さ、口径を持つ動脈として頸動脈・橈骨動脈・胃大網動脈の組織学的構造を冠動脈と比較した。頸動脈と比較し、橈骨動脈・胃大網動脈はコラーゲンが豊富な血管であり、組織学的構造が冠動脈に類似していることが示された。これらの血管を高静水圧法により脱細胞化血管を作製した。高静水圧法処理した動脈内に細胞核の残存は確認されず、残存DNA定量により、高い細胞除去が示された。走査型電子顕微鏡を用いた微細構造評価から、脱細胞化動脈は、基底膜様構造・血管内弾性板などの構造を維持していることが明らかになった。脱細胞化血管の力学的特性を破裂試験・保持縫合強度試験により評価し、未処理の血管と同様の力学的特性を維持していることが示された。得られた脱細胞化血管の生体適合性を、ラット頸動脈移植実験により評価した。コントロールとして未処理橈骨動脈を使用した。未処理移植群においては、移植直後に急性拒絶反応が認められ、3日後の評価において、血管内に血栓が生じ閉塞していた。脱細胞化橈骨動脈移植群においては、拒絶反応は認められず移植14日目評価で、開存とレシピエント細胞による再細胞化が観察された。レシピエント細胞は、血管内腔に内皮細胞、中膜領域に平滑筋細胞が浸潤していることが確認された。以上から、脱細胞化橈骨動脈は小口径血管グラフトとしての応用可能性があり、移植後にレシピエントによる再細胞化が望めることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
組織学的構造の異なる動脈を脱細胞化し、小口径血管グラフトとしての応用可能性を検討することで、組織学的構造による生体反応の差についての新たな知見を得られた。これらの検討の報告は他の研究グループに先駆けたものであり、新規性の高いテーマとして今後の発展性が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
組織構造を維持した脱細胞化血管の移植結果より、移植後に内皮細胞による被覆が認められ、2週間までの開存が確認された。内皮細胞接着性や、抗血栓性は脱細胞化動脈の基底膜構造に起因していると予測される。今後は、基底膜構造を有する脱細胞化血管シートを作成し、構造分析等を行う。また、作製したシートを加工することで内皮細胞接着性・抗血栓性を有するチューブ構造体の作成および、評価を行う予定である。
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