研究概要 |
申請者は既に、ニッケル触媒によるイソシアナートと一置換アレンの分子間[2+2+2]付加環化反応を初めて見出し、ウラシル誘導体を位置およびエナンチオ選択的に合成できることを報告している。 この反応は含窒素ニッケラサイクル中間体をウラシル誘導体の不斉合成に応用できることを初めて示した重要な研究成果である。そこで昨年度は、この反応の一般性を向上させることを目的として研究に取り組んだ。具体的には、反応試剤として1,3-ジエンを適用することを目指した。その結果、ニッケル触媒の存在下で4-トリルイソシアナートと1-フェニル-1,3-ジエンを加熱撹拌することで、ウラシル誘導体,6-スチリルー1,3-ジ(4-トリル)ジヒドロピリミジンが57%の収率で得られることを見出した。以下に具体的な研究成果を示す。 (1)収率の向上を目指して触媒の最適化を行った。その結果、Ni(cod)2および配位子DTBM-sEGPHosから調製したニッケル(0)触媒を用いた場合に83%の収率で反応が進行することが分った。 (2)イソシアナートと1,3-ジエンの基質一般性を調べた。イソシアナートについては、種々のアリールイソシアナートが適用できた。また、1,3-ジエンについては、1位にアリール基やアルキル基が置換した1,3-ジエンや1,3-ブタジエンが適用できた。 (3)反応機構の考察を行った。本反応はニッケル(0)上での1,3-ジエンとイソシアナートの酸化的環化反応による含窒素五員環ニッケラサイクルの生成、もう1分子のイソシアナートの挿入、最後に還元的脱離を経て進行すると考えている。 以上のように、アレンをカップリングパートナーとして用いた場合には合成することが出来なかった置換様式のウラシル類を合成できるようになった。すなわち本研究は、イソシアナートを用いた完全分子間[2+2+2]付加環化反応の有用性をさらに高めた重要な成果であると考えている。
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