研究概要 |
25年度は、不飽和化合物として1,3-ジエンを用いた分子間[2+2+2]付加環化反応の開発や、この反応で得られる生成物を用いた新規ウラシル類の合成研究に取り組むことを計画していたが、これらの研究課題は24年度に全て取り組んだ。そこで25年度は、申請者の所属する研究室で最近見出された、1-アルケニルボロン酸エステルを用いたアルデヒドのアンチ選択的なアリル化反応を発展させるために2つの研究に取り組んだ。以下に研究成果の概要を示す。 (1) イリジウムおよびキラルリン酸触媒によるアルデヒドのエナンチオかつアンチ選択的なアリル化反応の開発。不斉反応へ展開することを目指して、低温条件下でも反応が進行する高活性な触媒を探索した。その結果、カチオン性の[Ir(cod)_2]BF_4錯体とPCy_3から調製したイリジウム触媒と(R)-TRIPの存在下で、ベンズアルデヒド(1)に(E)-1-ペンテニルボロン酸エステル(E)-2を28℃で作用させると、アンチ体のホモアリルアルコール3が不斉収率93%、ジアステレオ選択性>98:2で得られることを見出した。 (2) ロジウム触媒による脂肪族末端アルケンとピナコールボランの脱水素ポリル化反応の開発。1-プルケニルボロン酸エステルを極めて入手容易な脂肪族末端アルケンから合成する反応の開発に取り組んだ。カチオン性の[Rh(cod)_2] BF_4錯体と(S, S)-i-Pr-Foxapから調製したロジウム触媒と2-ノルボルネンの存在下で、1-ペンテンにピナコールポランを28℃で作用させると、脱水素ボリル化生成物が好収率で得られることを見出した。また本手法を、(1)で開発した不斉アリル化反応に応用した。これにより、入手容易な脂肪族末端アルケンから付加価値の高いホモアリルアルコール類を合成することが可能になった。
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